なかなかいつもとは違う変化があり、読み応えのある一冊でした。
哲学者と僧侶の二人が、それぞれの立場から悩みに向き合い、解決のヒントを示してくれる本です。
人は誰しも、口に出さないだけで多くの悩みを抱えているもの。その悩みは、生老病死、少子高齢化、グローバル化、タイパ・コスパ重視の社会、SNSやAIの進展など、さまざまな領域に広がっています。
もちろん、悩みが解決できれば一番よいのですが、まずは少しでも軽減できればいい。悩みを受け止め、心が癒される視点に出会いたい。そんなとき、哲学と仏教という異なるアプローチからの言葉は、緒につくヒントを与えてくれます。
仏教は東洋思想として「苦しみとは何か」を探求し、そこから解放される生き方を目指す営み。
哲学は西洋思想として、常識を超えて考えることで物事の本質を探究する営み。
アプローチは異なりますが、共通点も多く、表現は違っても意味は同じところに行き着く場面がたびたびあります。
■印象に残った箇所
「どうすればやりたいことが見つかるか?」(哲学)
→ 魂が喜ぶまで、発信し続ける。
10年以上続けている読書ブログの更新が、まさにこの言葉に当てはまると感じました。
「どうすれば楽しく生きられるか?」(哲学)
→ 初めて、かつ最後かもしれないと思え。
イベントや講演会など非日常の場では、「この時間をできるだけ面白くできないか、楽しめないか、有意義にできないか」と思いながら参加しています。この考え方をさらに深めたいと思いました。
「好きな人を忘れられず辛いです」(仏教)
→ 別れがあれば、出会いもある。
経験上、会わなくなる人とは自然と離れていきますし、行動していればまた新しい出会いが必ず訪れるものです。
哲学と仏教は、歴史に裏打ちされた人類の叡智です。悩みの解決だけでなく、日々の問題に向き合う際にも大きな助けとなります。大切なのは、知識として知るだけでなく、その意味を考え続け、たとえ小さくても行動してみること。
物理的・技術的な即効薬ではなく、じわっとあとから効いてくる薬のように、心を安心させてくれる視点の転換を求めているのだと感じました。
目次
はじめに 今、哲学と仏教が求められるわけ
回答者紹介 小川仁志 大來尚順
【悩み1】哲学や仏教を勉強したら、何がわかるの?
《哲学の答え》より善く生きるための「ものの見方」がわかる
《仏教の答え》「苦しみ」をどう解決すればいいかわかる
【悩み2】哲学や仏教は、何の役に立つの?
《哲学の答え》自分の意識を変えることで、現実が変わる
《仏教の答え》仏教は、一般的な悩みには役に立たない
【悩み3】哲学や仏教に向いてるのって、どんな人?
《哲学の答え》驚いたり感動したりしやすい人が向いている
《仏教の答え》挫折経験が多い人に向いている
【悩み4】どうすれば、やりたいことが見つかる?
《哲学の答え》魂が喜ぶまで、発信し続ける
《仏教の答え》自分への問いかけを持ち続ける
【悩み5】共感力のある人間らしい生き方って?
《哲学の答え》あまり求めすぎないほうがいい
《仏教の答え》無理に共感する必要はない
【悩み6】どうすれば楽しく生きられる?
《哲学の答え》初めて、かつ最後かもしれないと思え
《仏教の答え》自分というものに囚われすぎないこと
【悩み7】どうしたら自分の壁を越えられる?
《哲学の答え》ちょっとずつ改善していくと、最後は正解になる
《仏教の答え》自分と向き合い弱音を吐き出せば、前向きになれる
【悩み8】受け入れ合うって、どういうこと?
《哲学の答え》自分の中に、自分と他者を橋渡しする私をつくる
《仏教の答え》受け入れるよりも、認め合うことが大切
【悩み9】人付き合いは必要ですか?
《哲学の答え》孤独でも人生は楽しめる
《仏教の答え》仏教は孤独を否定せず、推奨している
【悩み10】彼氏とか面倒くさいけど、恋愛はしたい
《哲学の答え》恋愛したいなら、恋愛なんてしなくていい
《仏教の答え》今は自分磨きをして、ご縁を待とう
【悩み11】好きな人を忘れられずツライです
《哲学の答え》新しい方向へ進むには、自分との和解が必要
《仏教の答え》別れがあれば、出会いもある
あとがき
著者等紹介
小川仁志さん
哲学者・山口大学国際総合科学部教授。1970年京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン、フリーター、公務員を経た異色の経歴。市民のための「哲学カフェ」を開催するなど哲学の普及に努めている。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」や「ロッチと子羊」で指南役を務めた
大來尚順さん
僧侶・著述家。1982年山口県生まれ。龍谷大学文学部卒業、米国カリフォルニア州にある神学大学院連合へ進学し、修士課程修了。その後、ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や書物の翻訳も手掛け、執筆、講演、メディアなど活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学奨励賞を受賞
【No2056】その悩み、哲学者とお坊さんはこう答える 小川仁志 大來尚順 法藏館(2025/11)
