スポーツの現場には、それぞれのものづくりが生み出した多彩な物語がある。こだわり抜かれた道具には、製作者や使用者の思いが圧縮されるように詰まっているのだと、あらためて感じた。
大谷翔平さんのバットは、アメリカの「チャンドラー」社製で約4万円。硬質で、扱うにはフィジカルと高度なテクニックが求められる。
カーリングのストーンは1個7万5千円。カーリング発祥地である英国スコットランド・アルサクレイグ島の花崗岩から作られ、弾力性があり欠けにくい性質と、水分を吸収しにくい性質の2種類が使われている。
大相撲で使われる、竹かご一山分の塩は3千円。家庭でもおなじみの伯方塩業「伯方の塩」が用いられ、にがりと水分をほどよく含み、粒が大きいため盛り塩にしやすく、指からこぼれにくい。
羽生結弦さんのスケート靴は24万円。極端に硬い靴ではなく、初日から足に馴染む柔らかく軽い靴を選び、そこから大きな結果を生み出してきた。
神宮球場のグラウンド整備に使われる「トンボ」――正式名称は「グラウンドレーキ」。価格は6千円。摩耗や腐食に強く、使い勝手がよく自立もできる道具を、森田アルミ工業が製作している。
こうした道具の背景を知ると、世の中は大企業だけで回っているわけではないと気づかされる。名前はあまり知られていなくても、優れた技術や感覚を持つ職人や工場があり、そうした人たちがスポーツの現場や社会を静かに支えているのだと教えられた。
目次
はじめに
第1章 打つ
第2章 投げる
第3章 握る
第4章 着ける
第5章 知らせる
第6章 集中させる
おわりに
著者紹介
熊崎 敬さん
1971年、岐阜県生まれ。サッカー専門誌編集者を経てスポーツライター。難民・移民フェス実行委員としても活動中。
【No2042】大谷のバットはいくら?スポーツを支える道具とひとびとの物語 熊崎 敬 柏書房(2025/11)
