前後編という位置づけではないと思うが、二冊を続けて読むと物語の世界に一気に引き込まれ、気づけば夢中で読み終えていた。設定そのものは現実にはまずあり得ないはずなのに、読み進めるほど「もし本当に起きたらどうなるのだろう」と想像をかき立てられる。
物語の中心にいるのは、総理大臣・真垣統一郎に瓜二つの容姿を持つ売れない舞台役者、加納慎策。
いわば“影武者”として政治の最前線に立たされ、自衛隊派遣、憲法解釈、不況、パンデミック、自然災害、オリンピック、台湾有事など、国の命運を左右する局面で次々と決断を迫られていく。荒唐無稽な設定でありながら、緊張感と臨場感がページから立ち上がってくる。
特に印象に残ったのは、アルジェリアの日本大使館占拠事件を想起させる場面。テロリストに対して断固とした対応を取るべきか、憲法上の制約から静観せざるを得ないのか。もし現実に起きたら、私たちはどう判断するのだろう。青臭いと言われるかもしれないが、「日本人を救いたい」という加納のまっすぐな思いに触れたとき、胸が熱くなった。
政治・外交・安全保障といった映像化が難しいテーマを、ここまで物語として描き切った著者の力量に改めて感心する。
フィクションでありながら、現実の社会や政治のあり方を考えさせられる一冊だった。
2の目次
1 VS 経済
2 VS 感染症
3 VS 災害
4 VS 五輪
5 VS 有事
目次
一 VS閣僚
二 VS野党
三 官僚
四 テロ
五 国民
エピローグ
中山七里さん
1961年生まれ、岐阜県出身。2009年、『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞、翌年デビュー
【No1984】『総理にされた男 2 第二次内閣』中山七里(NHK出版/2025年9月刊)『総理にされた男』中山七里(NHK出版/2015年8月刊)

