【No1983】エピクロスの処方箋 夏川草介 水鈴社(2025/10) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

往診のため自転車で三条大橋を駆け抜ける姿、甥っ子との微笑ましい会話、そして京都の和菓子。京都の景色や空気が自然に立ち上がり、穏やかな時間の流れと人のぬくもりが静かに沁みてくる。個性的な医師や仲間たちに囲まれながら、患者とその家族に寄り添う日々。登場人物たちの心の揺れに触れるうち、こちらの視点や生き方にもそっと変化が生まれる。読んでいると心が澄んでいくような感覚がある。

「医療では、人を救えない」と語る内科医・雄町哲郎。通称マチ先生は、妹でもあった母を亡くした甥を引き取り、地域の病院で働いている。細やかな心配りと優しさに満ちた人物で、目の前の患者に真摯に向き合う姿勢が静かな光を放つ。与えられた場所であきらめずに働き続ければ、准教授の花垣のように、その姿を見ている人は必ずいる。いつか引き上げられ、実力を発揮し、さらに活躍する日が来るはずだと思わせてくれる。次作を楽しみに待ちたい。

 

目次

錦秋

冬至考

百鬼夜行

初弘法 

 

著者紹介

夏川草介さん

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県で地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は2010年本屋大賞第2位となり映画化。他の著書に、世界40カ国以上で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師としての経験を綴ったドキュメント小説『臨床の砦』、2024年本屋大賞第4位・京都本大賞受賞作『スピノザの診察室』など。