医療現場の疲弊と報道の葛藤が交錯する姿は、今もなお忘れられない現実を思い起こさせる。
コロナ禍の医療現場を題材にした小説。
日々奮闘する医師・伊達允彦が勤務する病院を、反ワクチン団体「阿神儀会」が襲撃する。その代表が院内で死体となって発見され、事態は一層混迷を深めていく。
週刊春潮副編集長・志賀倫成らによる報道、伊達ら医療従事者の苦悩と疲弊、承認欲求に囚われた陰謀論者たちの暴走――それらが複雑に絡み合い、物語は進展していく。
コロナ禍の混乱を背景に描かれているため、現実の重みを伴う描写に胸を突かれるように感じ、実体験と重ね合わせながら最後まで一気に読み進めた。
ジャーナリスト志賀の葛藤、医師としての正義感に燃える伊達の憤り、そして想定の範囲内に近いながらも鮮やかなどんでん返しがあり、胸に迫る読後感を残す作品だった。
目次
一 閉塞
二 内圧
三 外圧
四 亀裂
五 崩壊
著者略歴
中山七里さん
1961年岐阜県生まれ。会社員生活のかたわら執筆を続け、2009年『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。翌年デビュー。
