【No1800】ヒポクラテスの困惑 中山七里 祥伝社(2025/01) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

またまた終わりにどんでん返しがあった。

コロナが猛威を振るったあのパンデミックのころを振り返ると、終わりの見えない不安な毎日が今では隔世の感か。

コロナ禍マスクも手に入らない中、未承認のコロナワクチンの接種によるあるセレブの死亡が発生した。

浦和医大法医学教室の光崎教授による解剖によって思わぬ方向へ。

埼玉県警の古手川刑事や渡瀬班長、そして警視庁の犬養刑事や、キャシー准教授、栂野真琴助教授が動きまわる。

 

コロナ禍の世の中の混乱に乗じ紛れこむ悪意ある人間はとても恐ろしい。

 

黒死病とも言われたペストのパンデミック時の対応など、歴史から人は学ぶべきだ。

13P 

「まさか21世紀にもなって、14世紀と同じ轍を踏むなんて」

「人は悲しいほど学ばないのですよ。真琴。過去に何度もパンデミックを経験しながら、いざ発生してしまうとそれまで培ってきた人智を放り出してしまう。きっと疫病に対して遺伝子レベルで恐怖心が記憶されているからだと私は考えています」

遺伝子レベルの記憶云々はともかく、人は学ばないということは腹に落ちた。人間は絶望するほど愚かではないが、さほど賢くもない。それは真琴がここ数年で思い知らされた現実でもある。

「先行き、不安ですね」

「不安がっているうちは、まだ安全なのですよ」

キャッシーは脅すように言う。

 

こんな最低な思いで動くようなマスコミ関係者がいるとすれば、それに対応するのがとても難しく恐ろしいものだ。

234P

堪らず古手川は問い質す。人の心を弄ぶ尾山の本音を聞きたいと思った。

「ワタクシはヒトの本性を見たいのですよ。丹念に身体を洗い、入念な化粧をし、綺麗に着飾った上辺には何の興味もありません。誰しも裡に秘めて劣等感、物欲、金銭欲、支配欲、嗜虐性、嫉妬心、猜疑心、そして憎悪。そういうものを白日の下に晒してあげたいのですよ。そしてその対象は上流階級、セレブであればあるほど好ましい。お高くとまった彼ら彼女らの本性を暴く。大衆にはそれらを知る権利があります」

 

 <目次>

一 災厄

二 偽薬

三 困惑

四 混迷

五 宿痾

 

 

中山七里さん

1961年岐阜県生まれ。2009年『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。幅広いジャンルを手がけ、斬新な視点と衝撃的な展開で多くの読者の支持を得ている。本シリーズの第一作『ヒポクラテスの誓い』は第5回日本医療小説大賞の候補作となり、WOWOWにて連続ドラマ化された。