この物語には、二人の「私」があった。
「第一部 昼のはなし」から「第二部 夜のはなし」に進んだときに空気感が変わった。
昼の部分と夜の部分とは人格が違う解離性同一性障害者で少女の茜。
彼女は交通事故で身体が不自由でのどに呼吸器をつけ寝たきりの女性、咲子のおはなしボランティアを始めていく。
お互いの交通事故の件や少女茜の人格、女性咲子の秘密などが点から線で繋がっていった。常に伏線が敷かれていて、中にヒントがたくさん散りばめられていた。
この物語には、二つの「真実」があった。
二つの真実が終わりにちゃんと回収してくれたので読後はすっきりした気分であった。
予想できない真相を知り、あの結城真一郎さんが絶賛したのはよくわかる良い作品だった。
<目次>
プロローグ
第一部 昼のはなし
第二部 夜のはなし
エピローグ
1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞受賞。