本屋のミライとカタチ 新たな読者を創るために 北田博充編著PHP研究所(2024/02) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書は、例えば著者、主人公、偉人、歴史、自分等との、非日常の中での対話だ。

ご縁のあった著者を応援したい!
読書の楽しさ、面白さ、大切さを伝えたい!

「本を売るだけでない、本や本屋の魅力を多くの人に伝えていきたい」、

「日常的に本を読む習慣にない層に本の魅力を伝え本の世界に誘いたい」

本屋の未来について真面目に考えている本です。

 

書店や出版者などで働く人を狭義の本屋として、また業界外に身を置いて本や本屋を愛する人、本や本屋の魅力を広く伝えたい、応援したい人などを広義の本屋として定義されています。

広義の本屋としては、まずはいまの自分の持ち場で読書の魅力を発信していくなどできることをやっていきたいと。

25P 自分の持ち場で役割を果たす

書店に足を運んでくれる読者のニーズに応え、一般顧客をリピーターやファンに育てていくのは狭義の本屋の仕事で、未顧客(見込顧客や潜在顧客)に本の魅力を伝え顧客化していくのは広義の本屋の仕事です。狭義と広義の本屋とでは、ターゲットや果たすべき役割が異なります。出版社、取次、印刷会社、製本会社、著者、書評家、図書館で働く人、ブックディレクター(ブックコーディネーター)、読者らが、それぞれ楽しみながら自らの役割を果たしていくことで、本を読む人が増え、この業界はどんどん活性化していくはずです。本に関わる誰もが、自分の持ち場で役割を果たせばよいのです。

 

本だけを目的とせずになんとなく行きたくなるような策が必要です。

51P

何か面白いことがあるかもしてないから、あの書店に行ってみよう。暇つぶしにあの本屋に行ってみよう。

 

こういう姿勢や考えで読んでいけたらよいのではないかな。

◎73P 小説は最後のページまで読まなくたっていい

本を読む習慣がない人にとって、本を最初から最後まで読まなければならないという先入観が、読書を遠ざけている要因の一つではないかと思います。

私は必ずしも、本を最初から最後まで読む必要はないと考えています。読みたくなくなれば途中でやめればよいですし、気になる箇所だけ断片的につまみ読めばよいのです。また、世の中には自分が面白いと思う本や、自分の考え方にぴったり合う本ばかりが存在しているわけではありませんし、面白くない本との出合いや、こんなの読まなければよかったと思うような本との出合いも読書人生において大切です。「本」は「人」と同じようなものなので、合う・合わないはもちろんありますし、気の合わない人間との出会いを通じてしか自らを客観視できない側面もありますから、遠回りや時間の無駄遣いに思えるような読書こそ人生の糧になるのです。あまり気負わずにぱらっと適当に開いたページだけを読んでみるような気軽さが読書には必要です。

 

コアなユーザーは既にたくさん読んでいます。月に10冊読む人にもう10冊読んでくれって言っても……。全く読まない人がたくさんいるので、そういった方に対して、少なくとも月に1冊でも読んでもらえればこの業界は明るくなって活性化していきますよ。

99P 未顧客へのアプローチはなぜ重要か?

1 コアファンよりも未顧客(ノンユーザー・ライトユーザー)の方が多い。国民の約半数が1か月に1冊も本を読まない。

2 コアファンにこれ以上購入してもらうことは難しい。ライト・ユーザーを増やすことこそ業界を肥やしていく重要なアクション。

3 未顧客に対して本とのタッチポイントを創る仕事は「狭義の本屋」には難しい。書店では、本を売ることが最優先となる。本の魅力を伝えるだけではビジネスにはならない。

 

ただ問題を提起しているだけでなく、読者の創出策の具体的な案を提示していました。

153P 新たな読者を創出するための方法

1 ターゲットを拡大する。ECとオンラインを活用する

2 用途を拡大する。泊まれる本屋、自分の本棚がある、インテリア雑貨があるなど従来の用途とは異なる用途を提案する。

3 アンバサダー(インフルエンサー)を活用する

4 付加価値をつける。一万円で選書する、オリジナルブックカバーなど

5 ギフト需要を創出する。オリジナルカバーで巻いて販売するバースデー文庫など

6 掛け算思考で新たな価値を生む。本とビールとイベントを掛け算したもの。

 

読書は時限爆弾のようなもの。素晴らしい魅力です。

177P 本のコアな価値は何か

「本はいつ起動するかわからない時限爆弾のようなもの」で、いつ効力を発揮するのかわからないうえに、効力を発揮しないまま終わることもある一方で、予期せぬタイミングで効き目を発揮する遅効性を持ちます。この遅効性こそ、本というプロダクトの独自性であり価値です。

 

コアなファンやリピーターを増やすよりも、新規顧客やライト・ユーザー増やすことの方が業界を盛り上げていくことになります。

にわかファンを増やして、のちにコアなファンにしていったプロレス界のv字回復事例を取り上げていたので説得力がありました。

254P「本に興味がない人や普段本屋に足を運ばない人に本の魅を伝え、新規顧客を増やしていくことがこの業界にとって何より重要なことです。にわかファンを大事に出来ない業界にこれまで以上の発展は望めません。」

 

 <目次>

はじめに 

第1章 本屋とは誰か?(未顧客を顧客化していくために Interview―芹澤連(マーケティングサイエンティスト))

第2章 本への入口を創る(高校国語科教諭は本屋か?TikTokerは本屋か?)

第3章 本への入口を広げる(異業種から学ぶ「新規顧客創出法」、プロレス業界のV字回復と本屋の未来)

座談会(有地和毅、花田菜々子、森本萌乃、山下優)新たな読者を創るためにできることは何か

おわりに 

 

1984年神戸生まれ。大学卒業後、出版取次会社に入社し、2013年に本・雑貨・カフェの複合店「マルノウチリーディングスタイル」を立ち上げ、その後リーディングスタイル各店で店長を務める。2016年にひとり出版社「書肆汽水域」を立ち上げ、長く読み継がれるべき文学作品を刊行している。2016年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)入社。現在、梅田蔦屋書店で店長を務める傍ら、出版社としての活動を続けている。2020年には、本・音楽・食が一体となった本屋フェス「二子玉川本屋博」を企画・開催し、2日間で、3,300人が来場

 

<本書に登場する方々>

芹澤 連 マーケティングサイエンティスト

嘉登 隆 元・高校国語科教諭

田口幹人 未来読書研究所

けんご 小説紹介クリエイター

粕川ゆき いか文庫

瀬迫貴士 ページ薬局

内沼晋太郎 ブック・コーディネーター

高木三四郎 プロレスラー

伊野尾宏之 伊野尾書店

有地和毅 ひらく/日本出版販売

花田菜々子 蟹ブックス

森本萌乃 Chapters書店

山下 優 青山ブックセンター本店

 

【No1605】本屋のミライとカタチ 新たな読者を創るために 北田博充編著PHP研究所(2024/02)