相続のまえに遺言書を書くメリットが多く書かれてありました。
その反対に、相続では情が通用しない、遺言がなかったためにトラブルが起きた事例があります。
過去の戸籍からどんな関係者が現れるともわからない。亡くなった方を基準に考えると、例えば、別れた妻との間に子どもがいる、認知した子がいる場合などです。
また、兄弟で土地等を共有にした場合です。不動産はなかなか分割できないので相続では単独所有にするべき。さらに、内縁の妻の場合、法律上戸籍を入れていないと配偶者ではないため法定相続人には決してなれない。
そのほか、未婚の人だけでなく、結婚して子どもがいない人、夫も両親も既に死去、兄弟姉妹もいない人、つまり相続人が一人もいない人です。遺言書に日付が明記されていなかったために無効となった事例もありました。
「付言事項」は、とくに勉強になりました。残された相続人を傷つけない争族を巻き起こせない大切な遺言の一部です。遺言に財産を誰にあげるかという法的な効果を持つ部分のほかに、付言事項という法的効果がないことを書く部分があります。「家族への感謝や自分の葬式の形式」など、あとに残された相続人に自分の想いをことばで伝えられるか、それによってトラブル、争族を防ぐことが可能となります。
知っていると良かったなと思うことや知っていて得することがあります。
相続にあたっては、遺言に関してそのメリットが顕著になるかと思います。
相続事項を補完するために、例えば、行政書士や司法書士などの法律の専門家に相談することも選択肢の一つです。
遺言と遺書を混同してはいけません。死亡した時に財産をどのように分配するか法的な効果を発揮する「遺言書」は、死を覚悟した人が死後のために書き残す文書「遺書」とは違います。
自分が50歳ぐらいになると、親が高齢となり体が弱ってくるような年代ではないかと思います。
自分にとっても知力と気力と判断力、決断力などが充実している年代のうちに遺言を書くメリットを強く感じました。自身の意思表示をしておくため、残された者に迷惑がかからないようにするため、あとの争いを未然に防ぐためにも必要なのです。
この本に書かれてあったとおり、子どもがいない夫婦などで連れ合いが亡くなってから義兄・義姉などとの間でまさに争族とならないために、事前に遺言書を認めるなど、息災なうちにできることをする、何をなすべきなのかを考えさせられました。
97P 相続争いはごく一般家庭にこそ起こるもの
家庭裁判所申し立てられる年間1万2千件の遺産分割調停のうち、実に全体の33%が1千万円以下の案件という。全体の約75%が遺産額5千万円以下の案件が占めている。
自宅があって、老後の預貯金があって、というごく普通の家庭こそが相続争いが最も勃発しやすいのだということを認識してください。
相続人同士のデリケートな話し合いの遺産分割協議をカットするツールが「遺言書」なのです。遺言書を用意することによってこうしたリスクを回避できる、遺言書には非常に大きな効果があります。
<目次>
はじめに
第1章 いざこざは「遺言がない」から
第2章 トラブルを防ぐ基礎知識
第3章 遺言書がないばかりに生じた争い
第4章 遺言を書いたのに起きたモメ事
第5章 さらに遺言を活用する
巻末資料 遺言書を作成してみよう
自筆証書遺言作成のポイント
公正証書遺言作成のポイント
辻・本郷税理士法人相続部部長。税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。東京都出身。慶應義塾大学卒業後、2009年に独立系税理士法人の最大手で、相続税申告件数日本一の辻・本郷税理士法人に入所。2012年から2年半にわたりメガバンクのプライベートバンキング部門へ出向し、富裕層の資産承継にかかる税務顧問を担当。帰任後は相続部に在籍し、相続・資産承継コンサルティングをメインに、相続や贈与の税務申告はもちろん、セミナー活動、執筆活動を精力的に行う。
【No1520】55歳になったら遺言を書きなさい 17のケーズで学ぶ死ぬ直前じゃ間に合わない「遺言のススメ」 井口麻里子 あさ出版(2020/04)