安易な理解や共感を打ち砕く破壊力を感じさせられる。
主人公の釈華は背骨が湾曲する難病を患い人工呼吸器や電動車いすが手放せない生活である。健常者が普段気にもとめない自明のことを無意識に鋭く突いている。皮肉まじりの冷ややかな視線とリアルな描写に圧倒される。「ハンチバック(せむし)」との自嘲的な表現には、切実なまでの苛立ちや怒り哀しみが幾重にも渦巻いていて、その渦の底へと引きずり込むような強い印象を得た。
実際の苦しみは分からない。障害者ではないからだ。健常者ならではの悩みがあったとしたらそれは分からないだろう。健常者ではないから。
身体障害者であるならば、実体験として描写が痛いくらいにありありと分かるだろうが、馴染みがない場合にはどこまで想像できるのだろうか。分からないならば分からないようにして、本を読んだのちに疑似的な体験から気持ちは寄り添うことはできるのではないか。
1979年生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞し、デビュー
