柚月裕子さんのミステリー、ホラー、サスペンス、ユーモアがある短編集。
ぼくは、このなかで「泣く猫」が印象に深く残った。
133P
母は娘から見ても、人目を惹く容姿をしていた。若い頃の母を見たら、女性の多くが、あんな美人に生まれたかったと思うだろう。しかし、母にとっては、美しく生まれたことが災いだった。男好きな女が、男が好みそうな体つきをしていたことが、母の孤独な人生の根幹だったのだと思う。
主人公の真紀の母がアパートで孤独死した場面から始まる。そしてマキという名の猫がこのアパートに入り込んできて鳴き始めた……。
真紀が小学生になったころから彼女の母が外泊を繰り返すようになった。
何度も男と別れを繰り返しても我が子を捨てて男のところに行く。
真紀は、なんども児童養護施設に預けられるのだった。
子に恨まれ我が子を捨て好きになった男に走り男に捨てられ辿った孤独な哀しい女の末期。
なんとも哀れなものだ。
小さい時にひとつの布団に一緒に入り後ろから抱きしめられたことを思い出して、ひどい母だった。でも血を分けた肉親だからと。
ずっと疎遠だった実母の死に際して、マキという猫は、声を上げて泣きたかった真紀の気持ちを代弁していた。
論理的にうまく説明できないけれども、この話に共感できる気がした。
<目次>
チョウセンアサガオの咲く夏
泣き虫の鈴
サクラ・サクラ
お薬増やしておきますね
初孫
原稿取り
愛しのルナ
泣く猫
影にそう
黙れおそ松
ヒーロー
1968年岩手県出身。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。18年『盤上の向日葵』で「本屋大賞」2位
