92P「額装は高名な画家や美術館だけのものじゃない。ごく普通の一般家庭で、もっと日常的に楽しめるはずなんだ。子どもの描いた絵でも好きな人からもらったポストカードでも、気持ちいいなと素直に思えるものがいつもそばにあるって、すごく豊かなことだよ。額の良さを、その技術を、できるだけたくさんの人に見せて伝えていきたいって思うんだ。世間一般にとって、もっと身近な存在になるように知らせていきたいんだ。それが、俺の夢だね。人の営みと共に絵があり続ける、真の豊かな生活」
エスキースといっしょに癒されました。
「お探し物は図書館まで」もよかったけどこれもよい作品です。
安心して読めて、やさしくほっこりする物語が好きです。
おわりにはほろっと涙がこぼれるような温かい気持ちになりました。
表紙の裏には、エスキースがありました
長い髪の毛と赤のブラウスが四分の一ほどのサイズで見えてきます。
青味がかったシックなゴールドの額縁の四隅には、瀟洒な羽根の線刻があります。
このエスキースが毎回出てきます。
各章を繋げる重要な役割を果たしています。
エスキースとは、下絵のこと。
本番の前に構図を取る目的として描かれるものです。
一枚のエスキースを軸にして、さまざまな二人の関係が描かれています。
各章の語り手となる人物とその人物に対するもう一人の関係を深く堀り下げていきます
赤と青、レイとブー、茜と蒼の対比は、素晴らしい仕掛けだと思いますね。
35P「生命力って、生きる力じゃなくて、生きようとする力のことだよ」
<目次>
プロローグ
一章 金魚とカワセミ
二章 東京タワーとアーツ・センター
三章 トマトジュースとバタフライ
四章 赤鬼と青鬼
エピローグ
1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。『お探し物は図書室まで』が2021年本屋大賞2位に選ばれる。
