【No1089】ブラックボックス 砂川文次 講談社(2022/01) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

ストイックな文章と描写が続く。

バイクのメッセンジャーとして書類を配達する毎日、仕事は早く稼ぐサクマ。

将来の見通しが立たない単調で不安定な日々を送るサクマ。

刑務所に入っても同じような日々を繰り返すサクマ。

53P

建物と建物の間隙はほとんどなく、そういう壁と壁の間から立ち登る煙は換気扇からのものか。

ブラックボックスだ。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろうオフィスや倉庫、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようでいて見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。そんな予感がぼんやりと心中に拡がる。

 

サクマのこころに自由と不自由が共存しているような感じ。

そこはかとない不安と快感を求めているように感じる。

単調でいる不安定さを、有意義で格別な毎日に変えるような術はそうなかなかない。

人に流されず、あまり我慢しすぎず、素朴な思いをやさしくそとに現すことに気づいて、自主的にこつこつと一歩一歩前向きに行動するしかないのではないかと思った。

159P

自分はずっと遠くへ行きたかった。今もそのように思っている。ここで感じる不快感と安心感は両立している。この先どうなるかということ-つまりは刑期が満了したら外に出られるということ-がここでは担保されており、その保証が安心と不快を伴っていたのだ。

(中略)

刑務所は制度だ。制度だけが未来を確たるものとして示すことができる。自分は遠くへ行きたいと願いながら、一方で制度を希求していた。

 

1990年大阪府生まれ。神奈川大学卒業。元自衛官。現在、地方公務員。2016年、「市街戦」で第一二一回文學界新人賞を受賞。著書に『戦場のレビヤタン』『臆病な都市』『小隊』がある