「悲しみを経験しているのは私だけでない」
遠く離れた実家でお父さまが孤独死していたことから始まる約1年間にわたる如月サラさんの行動や心の動きを書き留めたエッセイです。
介護等の専門書ではなく、如月さん自身の体験談なので理解し納得しやすく共感することができます。彼女の貴重な体験を参考にしていければと思います。
「今まさに渦中にいる方の心を少しでも軽くすることができる友達のような役目を果たせますように。これから備えたい人の道案内となれますように。そしてあなたのあしたを幸せな方向に変えるきっかけになれますように。」
「親の孤独死、遠距離介護、空き家になってしまった実家。またこれから先の長い人生を生きていかなければならない私は、心の準備をする暇もなく、いきなり現代のさまざまな課題を抱えることになってしまいました。
親の介護はゆるやかに始まるもので、もう少し先のことだろうと高をくくっていたのです。いきなり両親とも実家からいなくなってしまうなんて思いもよりませんでしたし、何ひとつ話し合ってもいませんでした。」
親の介護問題は、他人事ではありません。
親がいれば誰にも起こり対応すべき事です。
遠くない将来において親が亡くなったあとの実家の整理を考える時がきっときます。
固定電話や電気、上下水道などの公共料金、水道光熱費代を対処していかないと。
如月さんは、父親の葬儀の対応、認知症の母親の面会、無人になった実家の後片付け、実家の4匹の猫の世話、父の相続等の色々な問題が一度に降りかかってきました。
「初夏のある日、実家に着いて抱いた違和感。庭に雑草が茂っている。塀を超えて隣家や道路に庭木がはみ出している。家は手入れしないと痛んでいきます。」
決して決して他人事ではないと思います。
なにか遠い知らない世界の話を聞いているのではありません。
正直に心構えを持つようにと諭された気がします。
働き盛りの4、50代が直面する問題について、エディターとしての豊富な経験を積んできた如月サラさんが、自らの体験から調べて得た知識を惜しまず共有してくれました。
このような年齢となってくると、親の問題は、身につまされる課題です。
誰にでもある、誰にでも起こる、誰にでも考えないといけない直面する問題です。
「感謝しているのは、実家に滞在中毎日、寝る前に電話を掛けてくれた友人と、毎日、今日はどうしているかと尋ねる短いメッセージを送ってくれた友人だ。誰かに気にかけてもらっている。それだけで私は救われた。
気にかけてくれる人がいると、とても心強いよ。
(中略)
今までの私は、誰かが悲しんでいるときにどう接していいのかわからなかった。連絡をすると相手を傷つけるのではないかと思っていた。これらからは、友達のSOSを感じたら話したくなったらいつでも連絡してねとそっと伝えてみようと思う」
「地元の友人たちにはもう頼れないと思っていたのは私だけだった。貴重な青春に日々を共に過ごしてきた仲間たちや、さまざまな事情で故郷に帰った人たちが今また近くにいてくれる。そのことに心から感謝し、いつか私も誰かの支えになれればと思っている」
独りだけで悩まないことです。
弁護士や行政書士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談できればよいのですが。
悲しみや自責を自分一人で抱え込まないことです。
如月サラさんのように文章にして発表することができればよいのですが。
一人だけで生きているのではありません。
人に頼り人に頼られて生きているのです。
お話を少しでも聞いてもらえる友人など頼れる人がいたならば頼ればよいのです。
そうできれば、ぼくでもなんとかしてそれらを乗り越えて、やっていけることができるのではないかと思います。
<目次>
はじめに
第1章 ある寒い冬の日、遠く離れて暮らす父が孤独死していた
(コラム)親が元気なうちから始めたい「見守りサービス」
第2章 自室でひとり死んだ父は、最期まで生きようとしていた
(コラム)セルフネグレクトを防ぐゴミ出し支援と生前整理
第3章 父亡き後に残された老猫4匹 東京への移動大作戦を敢行
(コラム)親の死後に残されたペットは身近な人が飼うのが一番
第4章 「ごめんねえ、お父さん」遺影を見て認知症の母は言った
(コラム)認知症になったら動かせない 親の財産は家族信託等を検討
第5章 父が亡くなり母は施設へ 残る無人の一軒家と維持費問題
(コラム)知らないと税金面で不利になる 実家売却時のさまざまな特例
第6章 住む人のいなくなった実家は驚く速さで荒れ果てていった
(コラム)空き家放置は問題が山積み 自治体や専門家に相談を
第7章 「号泣するなんて恥」父の死を悲しむ自分が許せなかった
(コラム)親を失った悲しみを癒やす グリーフケアの考え方
第8章 私には緊急連絡先がない ひとり老いてゆく未来を考えた
(コラム)おひとりさまの老後や死後に活用できる支援サービスも
第9章 無人の実家に通いながら考えた、これからの仕事のこと
(コラム)急に始まる親の介護 今から早めの情報収集を
第10章 一番仲良しの叔母が亡くなった そう知った認知症の母は
第11章 故郷を遠ざけてきた私を、友人たちは近くで支えてくれた
第12章 父の死が紡いでくれた新たな「縁」 生きてゆく力になる
終章 父がひとりで死んでいた─ ひとり娘から父への手紙
おわりに
熊本市出身。エディター、エッセイスト。出版社で女性誌の編集者としての勤務あり。6匹の猫たちと東京暮らし。「日経AKIRA」で連載されたものです。
【No1085】父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること 如月サラ 日経BPマーケティング(2021/12)
