【No1039】六人の嘘つきな大学生 朝倉秋成 角川書店(2021/12) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

初任給は50万円。成長著しいIT企業、株式会社スピラリンクスの最終選考。

慶應の久賀蒼汰、明治の袴田亮、お茶の水の矢代つばさ、早稲田の嶌衣織、立教の波多野祥吾、一橋の森久保公彦の六人。

応募総数5千人以上の中で最終に残ったこの六人が内定に相応しい者をと議論する中で六通の封筒が発見される。そこには六人それぞれの罪が告発されていた。

 

参加者の罪を暴いたのはこの中で誰なのか。

どうしてみんなの罪を暴かなければいけなかったのか。

最終面接で一人だけ合格したのは誰なのか。

六人ぞれぞれの目線や発言をもとにして物語が動いていく。

真実を知りたいから一気読みを避けることができず仕方がなかった。

 

165-166P

月は地球に対して常に表側だけを見せているそうで、裏側を地球から見ることは叶わないらしい、果たして月の裏側がどんな様子なのだろう。

実際に調査された結果によると、月の裏側は表側に比べて起伏が大きく、クレーターの多さが目立つらしい。言ってしまえば、ちょっと不細工なんだそうだ。ある意味でそれはあの封筒の中身にも似ているなと、そんなことを考えた。

(中略)

僕らは封筒の中に隠されていた一部分を見て、勝手に失望して、あろうことか当人全体のイメージを書き換えてしまった。月の裏側に大きなクレーターがあることを知った途端に、まったく関係のなかったはずの表側に対する印象も書き換えてしまったのだ。

当たり前だが、彼らは全員、完全な善人ではなかったかもしれない。でも完全な悪人であるはずがなかったのだ。

おそらく完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にはいない。

 

自殺させた、キャバ嬢として働いていた、堕胎させた、未成年で飲酒した、詐欺商法に荷担した。兄が麻薬を打っていた。

それぞれに、なぜ?という真実があった。理由や言い訳があった。

 

人には、善悪、色々な顔を持っているのは事実だ。

同じ出来事があっても見る角度によっては違うという意味もある。

僕と別から見た印象が微妙に違うことがよくあること。

他人から聞いた印象を踏まえ、自分が見たものと重ね合わせて判断していきたいものだ。

たまたま見たわずかな裏の姿で、すべての表だった側の印象を書き換えてはいけない。

その姿になるためには、なにかしらの理由があるのだから。

できるならばそれを知ったうえで、自分の頭で考えて総合的に見て判断する姿勢を持ちたい。

理由がわからないところで判断するのは早計ではなかろうかと思った。

「おそらく完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にはいない。」

この物語のように、将来の悲劇が生じないためにも必要であった。

 

 <目次>

就職試験

それから

 

1989年生まれ。2012年に『ノワール・レヴナント』で第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞し、デビュー