大局的に眺めていて書評としてうまくまとめられていたのでまずは引用したい。
著者は1987年生まれの社会思想家、フンボルト大学で博士学位を取得し、権威ある国際的な賞(ドイッチャー記念賞)を最年少、日本人初で受賞した華麗な経歴だ。
(中略)
本書の論旨は明快である。気候変動は地球に確実に危機をもたらす。気候変動の原因である資本主義を温存したままでは、どのような弥縫策も気候変動と危機を止めることはできない。資本主義の本質を見抜いていたマルクスもそのことを指摘していた。それゆえ、私たちは資本主義を脱して、エネルギーや生産手段など生活に必要な(コモン)を自分たちで共同管理する「脱成長コミュニズム」に進まなければならない。
(脱成長コミュニズムには、5つの柱があった。使用価値経済への転換、労働時間の短縮、画一的な分業の廃止、生産過程の民主化、エッセンシャル・ワークの重視)
気候変動と資本主義の問題点を貴重なデータや研究により喝破してゆく迫力はすばらしい。
(中略)
資本主義こそが、利潤のあくなき拡大を目指してすべてを市場と商品化に巻き込み、自然の略奪、人間の搾取、巨大な不平等と欠乏を生み出してきたからには、それを変えなければ、解決にならない。
「齋藤幸平『人新世の資本論』SDGsで温暖化止まらず 本田由紀 東京大学教授『好書好日』」より引用
「真説日本左翼史 戦後左派の源流1945-1960 池上 彰 佐藤 優 講談社(2021/06))によると、マルクス・レーニン主義(科学的社会主義)、資本論、マルクス経済学など、最近「社会主義」という言葉が少しずつ目に触れるようになってきた。
富の偏在、経済力等の格差が拡大してきたことが原因だった。
例えば、非正規労働者のように構造的に立場が弱い人々の賃金が低く解雇されやすいため、地域間や階級間の格差が拡大してきたこと、経理、審査、営業など従来の事務職の人員が削減され、低賃金で働かざるを得ないことなどによるものであった。
気づいて驚いたことは、資本主義が欠乏を生み出すということだった。
資本主義は、すべてのものの豊かさをもたらすのが常識だと思っていたからだ。
本当に資本主義が私たちに幸せをもたらさないシステムなのだろうか。
ぼくは、両極端を望まない。
社会主義のなかで改革開放政策のように資本主義のよいところを選択したように、資本主義の中に社会主義の美味しいところを換骨奪胎しうまく活用して生きていけないものなのかと思った。
<目次>
はじめに―SDGsは「大衆のアヘン」である!
第1章 気候変動と帝国的生活様式
第2章 気候ケインズ主義の限界
第3章 資本主義システムでの脱成長を撃つ
第4章 「人新世」のマルクス
第5章 加速主義という現実逃避
第6章 欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
第7章 脱成長コミュニズムが世界を救う
第8章 気候正義という「梃子」
おわりに―歴史を終わらせないために
註
1987年生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。
