齋藤孝の冒頭文de文学案内 1分で蓄える知識&読みどころ 齋藤 孝 柏書房(2021/12) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書は、例えば著者、主人公、偉人、歴史、自分等との、非日常の中での対話だ。

ご縁のあった著者を応援したい!
読書の楽しさ、面白さ、大切さを伝えたい!

読みはじめる前のワクワク感が好きです。

とくに初めて触れる作家さんの作品を読む前には、新しいものに触れるときのようなドキドキ感があります。

第一印象は、人との出会いと同様に大事だと思います。

自分にフィットする作品かどうかを瞬時に判断し、これから付き合いをして(読んで)いくかどうか。

ぼくは、最初の文章を大切にしていて、それにはインパクトを求めます。

冒頭には、魂の籠った惹きつける文の力が必要だと思っていました。

あのググッと入り込んでいく気持ちが本の巻頭に感じることができればいい。

そうでないとそのまま引き続けて読んでいきたくならないからだ。

 

冒頭文には著者の魂がこもっている。私はそのように思っています。

作家というのは切れば血が出るような文体で書いています。

冒頭文というのは作品の筋に限らず、その著者の気合いというものが感じられるものだということです。

 

川端康成の「雪国」

その国境を抜けると雪国であったと、もうこれだけで名文です。主語がないんですね。誰が抜けたのか、列車が抜けたのか、よく分からない。そして「夜の底が白くなった」とあって、一気にその世界に導かれていく。こういう冒頭文の凄みというものを分かってもらえると、その作品の全体の良さも推し量ることができるというものです。

 

川端康成の文章は、一つひとつの言葉が、まるで音の宝石のようです。

川端の文章によってはじめて私は美しい日本語とはどういうものかを知りました。

美しい日本語には、世界を官能的に捉える川端の身体感覚が溶け込んでいました。

 

齋藤孝さんが選書された100作の冒頭が披露されています。

貴重な感じるべきポイントを解説されているほか、うんちくとなるような作家に関する齋藤孝さんのエピソードも書かれてありました。

 

名作のエッセンスにふれることでさらに啓発されて、続きを読みたくなるがよいかと思います。

その作品に誘われるリズムや感覚、誘われた快感というようなものを名作から味わえたら最高ではないかと思います。

 

「名文を一行も読まなかった日は失われた一日と思うがよい!」

 

 <目次>

はじめに 

第1章 これだけは読んでおきたい!最高に面白い日本の近代文学の名作(坊ちゃん、高瀬舟、浮雲、五重塔、たけくらべ、夜明け前、鼻、山月記、死者の書、雪国)

第2章 僕らの好きな日本の現代文学の名作(走れメロス、山椒魚、金閣寺、気まぐれロボット、火垂るの墓、蝉しぐれ、IQ84、火花ほか)

第3章 読めば読むほどどんどん教養が高まる日本の古典文学の名作(古事記、万葉集、源氏物語、土佐日記、枕草子、平家物語、太平記、徒然草、好色一代男、曾根崎心中ほか)

第4章 日本&世界「知のレジェンド」からのメッセージ自伝・遺書・手紙・評伝の傑作(福翁自伝、留魂録、龍馬の手紙、紫の履歴書、シューマン自伝、フランクリン自伝ほか)

第5章 共感しながら読むと心に響く「日本及び日本人」論の歴史的名著(更科日記、葉隠、五輪書、言志四録、武士道、陰翳礼讃、遠野物語ほか)

第6章 アイデンティティを確立してくれる!東洋の精神文化vs.西洋の思想の名著(論語、老子、史記、ブッダの言葉、孫子、菜根譚、新約聖書、方法序説、ゲーテとの対話ほか)

第7章 別の読み方でも、読み直してみたい!児童文学の名作(銀の匙、銀河鉄道の夜、二十四の瞳、みにくいアヒルの子、赤毛のアン、ハイジ、ガリヴァー旅行記、星の王子さまほか)

第8章 文化・芸術から人文・社会・自然科学まで、探究心をぐいぐい追究するための名著(風姿花伝、歎異抄、養生訓、みだれ髪、論語と算盤、禅の研究、魏志倭人伝、社会契約論ほか)

第9章 紀行文・時代小説・ミステリから総合小説まで繰り返し読みたくなる傑作エンタメの名著(おくの細道、東海道中膝栗毛、ライ麦畑で捕まえて、ドン・キホーテ、アンナ・カレーニナ、カラマーゾフの兄弟ほか)

第10章 戦争を知らない親子でも、ともに語り合いたい「あの時代」のリアルを描いた名著(戦艦大和ノ最期、戦艦武蔵、レイテ戦記、日本のいちばん長い日、アンネの日記、夜と霧ほか)

おわりに 

 

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。主な受賞作品に、宮沢賢治賞奨励賞を受賞した『宮沢賢治という身体』(世織書房)、新潮学芸賞を受賞した『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス)、シリーズ260万部を記録し、毎日出版文化賞特別賞も受賞した『声に出して読みたい日本語』(草思社)。他の著書に「身体感覚を取り戻す」「古典力」など。