著者さんの熱い想いがぼくのこころに伝わってきました。
この「おわり」の文章を読んで、この本を無性に読みたくなりました。
149P おわりに
もっといろんなことばを知ってほしい、もっと豊かな、そして正しいことばの世界を学んでほしい、という願いが、この本を生み出すきっかけでした。
第二言語の運用能力が、第一言語のそれを超えることはない。
一所懸命英語を学んだとしても、あなたの英語能力が、日本語のそれを超えることは(通常)ない。このことは、「いくらアウトプットの形を変えたとしても、持っている基盤がかわらなければそれ以上の成長は見込めない」、という理解にもなりえます。
日本語母語話者として、学生たちは生活のための「日本語」を使いこなしています。ですが、「国語」は使えているのでしょうか?ここに言う「国語」とは、抽象的な思考を理解し、批評し、自分の考えを表現していく言語の力のことです。他者と対話し、提案し、新たな未来を切り拓いていく「ことばの力」にほかなりません。
外国の言語よりも日本語に慣れ親しみ使いこなしていくほうが重要なのではないのか!
これまで、もやもやとして心に感じてきたことが雲散霧消した瞬間です。
自分の言いたいことを表現するために、やはり日本語能力を習熟するほうが優先すべきだと思います。
27P 点・線・面
電子辞書は、目的だけを獲得するものです。そこで得られた情報は「点」です。知識とは情報をつなげて、「線」や「面」を形成していくことで身につきます。この「線」や「面」を作る機能に関しては、紙の辞書の方に軍配が上がります。
例えば、本を買う時も、題がわかっていたら、ネット通販で買うのが一番楽です。でも、私は書店に行きます。誰かに勧められた本、今売れている本だけが欲しいのではありません。書店の店先で、何の予備知識も持たなかった本と出会うのが楽しいのです。どこかに行くとき、目的地に何があるかも大切だけれど、車窓の景色も楽しいし、意外な発見もある、そんなこととも似ているでしょうか。
最初からお目当てにしていた本や目的地は「点」ですが、周囲を見渡すことによって、「線」を経て「面」を形成していくように、辞書のページを繰ることによって、ことばは「面」を形成していくのです。
書店さんと図書館も同じです。
目的地に最短に行くのは面白くない。
途中で寄り道するのが楽しい。
目的地の隣や近くの気になった本を手に取るような余裕と勇気を持ちたい。
本との偶然の出合いを大切にしていきたいのです。
楽に簡単に手に入るものは離れやすい。
すぐ覚えられることは薄っぺらで忘れやすい。
わざわざ手間暇を掛けていく所がミソです。
最短な経路だけをたどってきた人よりも、こんな経験を積み重ねてきた人のほうが魅力的です。
人間力が増していくものと思います。
<目次>
はじめに
第1章 辞書と付き合う(ことばの宇宙に踏み出そう、複数の辞書と付き合う、敢えて、紙に拘る、意味だけでは戦えない)
第2章 語彙を増やそう(「語彙」を知っていますか、和語/漢語/外来語、「読める」と広がることばの世界、対義語でことばの地図を描く)
第3章 敬語に強くなる(敬語の種類を知る、尊敬語のコツ、謙譲語のコツ、丁寧語・美化語のコツ、敬語のよくある「誤り」、相手への配慮をことばに表す、改まり語を知る、メールを書く)
おわりに
索引
堀田あけみ
『1980 アイコ十六歳』(文藝賞を当時最年少で受賞)で作家デビュー。椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授。作家の枠にとらわれず教育の現場でも、心理学、小説創作などで教鞭をとる。
村井宏栄
椙山女学園大学国際コミュニケーション学部准教授。日本語学、国語学を専門とし、研究テーマは日本語書記史、辞書史。2010年、日本語検定1級合格。平成22年度第2回日本語検定読売新聞社賞(最優秀賞)受賞。
【No.929】ついスマホに頼ってしまう人のための日本語入門 堀田あけみ 村井宏栄 ナカニシヤ出版(2021/07)
