52ヘルツのクジラたち 町田そのこ 中央公論新社(2020/04) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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52ヘルツのクジラは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く。

世界で一頭だけのクジラ。

たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。

そのため、世界で一番孤独だと言われている。

声なき声を聴けるような運命の人には、出合えるべきして出会えるものだと思った。

102P

「第二の人生では、キナコは魂の番と出合うよ。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひとときっと出会える。きなこは、しあわせになれる」

久しぶりに目頭が熱くなった。

終わりには涙腺が緩くなった。

児童虐待やDV、性同一性障害に対する理解欠如など現代社会のさまざまな問題が描かれていた。

途中に、息が詰まるような厳しい激しい描写が続く。

 

幼い頃より家族から虐待を受けて育った貴瑚の半生は、家族から虐待や義理の父親の介護で搾取されていた。

同様に、母親に虐しいたげられていた「ムシ」と呼ばれていた少年は、タバコを舌に押し付けられるなどの虐待が原因で声をあげることができなくなっていた。

この少年の母親の琴美はこのような感じだった。

59P 線の細い、少女のような体つき。はにかむように笑って頬を掻く仕草は幼いけれど、しかしその顔は、村中の同級生とは思えないほど老けていた。美しい花が毒で枯れたような、そんな痛々しさがある。

貴瑚とこの少年の二人が、偶然引っ越した漁師町で出会ってしまってから、火花が散り始めた。

貴瑚は、少年の声にならない声聞き心に寄り添いながら、彼との距離を縮めていくのだった。

善い人間とそうでない人間とのわかりやすい対立軸があった。

後者人物たちによって、善良な人たちの美しい心の交流を強調して描くための反射装置となっていた。

 

不幸は不幸のままで終わるのではなく、なにかしら行動すると誰かが必ず見ていてくれて助けてくれる。

人は人によって支えられて生きている。

他人に助けられているとともに、自然に人を助けていることの繰り返し。

決して独りだけで生きていないのだと強く感じさせられるお話だった。

 

 <目次>

1 最果ての街に雨

2 夜空に溶ける声

3 ドアの向こうの世界

4 再会と懺悔

5 償えない過ち

6 届かぬ声の行方

7 最果てでの出会い

8 52ヘルツのクジラたち

 

1980年生まれ。福岡県在住。「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR−18文学賞」大賞を受賞。同作を含む「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」でデビュー。

 

【No.884】52ヘルツのクジラたち 町田そのこ 中央公論新社(2020/04)