日本昔話は、突っ込みどころ満載だという。
浦島太郎の玉手箱。「決して開けてはいけない」と言われたら、無性に開けたくなるのが人というものだ。
花咲か爺さんの「枯れ木に花を咲かせましょう」。本当に花が咲いたのかどうか。正直爺さんは、愛する犬を殺されて正気を失って心神喪失していたのではないか。
鶴の恩返しで「機を織っている間は決して部屋をのぞかないでください」。でも若者はのぞいて鶴だと知ってしまうことや、何回も身を削って織らせるのは、その布を売って儲けたい若者の金の亡者精神があったからだ。
「耳なし芳一」-天才音楽家を巡る嫉妬と愛情があった。
芳一という琵琶法師は、下関の阿弥陀寺に住んでいた。芳一は目が不自由だったが、琵琶の腕前は天才的、幼いころから師匠をしのぐほどの腕前で、その演奏は鬼神ですら涙を流すほどであった……。
夜な夜な亡霊に呼び出された芳一は、寺の裏にある安徳天皇の墓前で琵琶をかき鳴らす。平家の仕業だと悟った住職は、芳一の全身に般若心経を書きつけるが、耳だけ経文を書き忘れてしまった。亡霊は、迎えに来た証拠として耳を引きちぎって持ち帰った……。
この耳だけを失うことについての意味について。
中世日本では犯罪者への刑罰として「耳鼻削ぎ」が行われていた。本来なら死罪となるような罪人であっても、罪を許す温情的な処罰だったという。
また、琵琶法師というのは芸人であり音楽家であり語り部であった。
住職は、この琵琶法師によって慰められていた。
僧侶に妻帯が許されていなかった時代に、肉体的にも慰める役割を担っていたのかもしれない。
芳一がこっそりと外出していたことが住職を怒らせたのだった。嫉妬と怒りで独占欲が支配し始め、住職はわざと耳に経文を書かなかったのだ。
やんごとなき人に招かれて舞い上がっている芳一にお灸をすえるため、芳一を守ることができるのは住職だけだと見せつけるために、芳一を独占するために。
あくまで想像ではあるが、その時代の背景や出来事などを踏まえ考えている。
あながち間違いではないかもしれない。
子供向けなのでそのように直接的に判断するだけでなく、違う目で物事を俯瞰すること、客観的に事実を見て考えることが必要でなかろうかと教えられたのだった。
<目次>
第1章浦島太郎―乙姫の愛と復讐
第2章たにし長者―入れ替わった男
第3章こぶとり爺さん―異端の象徴としての「こぶ」
第4章手なし娘―継母の執念とその背景
第5章花咲か爺さん―花は本当に咲いたのか?
第6章舌切り雀―爺と雀の二時間サスペンス
第7章鶴の恩返し―家庭を壊す底なしの金銭欲
第8章猿の婿入り―異類婚姻譚に待ち受ける悲劇
第9章かちかち山―残酷描写・言葉遊び満載のエンタメ
第10章食わず女房―普通の暮らしにあこがれた山姥
第11章耳なし芳一―天災アーティストをめぐる嫉妬と愛情
第12章桃太郎―次世代ヒーローの条件
あとがき
参考文献
三重県出身。著述家。絵本や童話などの児童書の他、小説やエッセイ、作詞なども手掛ける。言葉遊びや日本の民話、妖怪などの面白さを子ども向けにわかりやすく表現する作品が多い.。
