自転しながら公転しているというのは、印象に残るよい表現だ。
30歳を超えたアウトレットモールのアパレルショップで働く都。
都の親が病気になったと思えば、職場では上司からのセクハラが起こる。
父親が癌になり母親の更年期障害が快復するかと思いきや簡単に治らない。
恋人の貫一との恋愛がギクシャクしてきて、職場の空気も悪くなってしまう。
もう山あり谷あり繰り返しだった。
これがとある人物の当たり前の日常なのだろう。
エピローグの結婚の状況下、戻ってまたプロローグを読むと納得する。
それぞれが与えられたその場所でそれなりに懸命に生きてがんばっている姿があった。
応援したくなるようなピソードがちりばめられ丁寧に描かれていた。
その時々の心の揺れや周りの人たちからの反応が手に取るように伝わってきた。
一緒になってこちらも苦しくなるときがあった。
ずばりこうなんだと腹を割って言ってくれる親しい友人の存在がいたことが救いとなっていた。
広島にボランティアに行くなどの行動を起こさずに都がひとりだけ問題を抱え悩んでいたならば、ハッピーな結果にはならなかったのかもしれない。
1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て作家デビュー。「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞、「プラナリア」で直木賞を受賞。ほかの著書に「なぎさ」など。
