「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」と、推しがファンを殴ったところから始まり。
「推しがアイドルではなく、人になった。」と、推しが芸能界を引退することで終わる。
推しのライブに行ったりCDを買ったりするだけではなく、発言の一言一句を書き起こしてブログにまで記録する。
推しのためにバイトをして生活費までを使って、自分の体を壊して家族を失っていった。
自分の全てを使って推しを推し続けている。
これは、生きる意味や日常のうるおいという表面的なものではなく、彼女の背骨であり皮膚であり血肉そのものであった。
推した経験がないとわからない感覚だ。
自身の全てを委ねる姿勢は、ぼくは真似ができないがわからないわけではなかった。
最後に、彼女が夜明けを表現している箇所が上手く気に入ったので取り上げた。
117-118P
観終えると朝になっていた。夜明けは光で視認するのではなくて、夜に浸していたはずの体が奇妙に浮くような感覚で認識する。一度おぼれて沈んでいった人が、死ぬと自然と浮かび上がってくるのはなぜだろうと思った。ひらいたままにしていたパソコンを動かして「最後なんだって思いました」を消す。「最後だと信じられなくて」と打ってまた一文字ずつ消していく。
1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、『かか』で第五六回文藝賞を受賞、三島由紀夫賞候補となる。
