【No.657】その果てを知らず 眉村 卓 講談社(2020/10) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

タイムマシーンがあったなら!

現在、過去、未来、どこにでも移動できる機械で自由に旅をすることができたら。例えば、重要な場面に出くわせたら面白いだろうなあ。

もし人の心を読むテレパシーという技術を使うことができたなら。友達の本当の気持ちを知ることができたら。念力で物を動かすことができたら……等々。頭の中でぐるぐると途轍もないことを想像していました。

荒唐無稽で突拍子もなく科学的に証明できないことに対して、非常に興味津々であった青春時代がありました。

 

眉村卓さんの代表作、ねらわれた学園やなぞの転校生のほかショートショートなど彼の本を次々と読ませていただきました。

眉村ワールドに十二分に浸ってあれこれと空想しながら、SF世界の面白さを知ったのでした。

 

今回の作品も普段と異なる不思議な世界へと誘ってくれました。

日本SF第一世代として活躍した眉村さんが晩年の病床で書き紡いでいた遺作です。

これが彼の最後の作品だと思うと寂しい限りです。

 

終わりは、朦朧とした意識のなかでの消え入るような描き方でとても切ないのです。

無理やり意識を現実に引き戻そうとする強い意志が感じられて心が動かされる部分でした。

 

246P

松原権兵衛は言った。

「このことだけは忘れないでください。かりにあなたが死んでも、生きているときの感覚を保持していればいいんです。意識だけが残っているなんて、周囲の人々にはわからないでしょう。そうです。あなたはいきつづけていいのです。いよいよになってもあなたの生命力はつづくのです。もちろんそれはこの世界この宇宙ではなくて、われわれの宇宙と重なった別の宇宙ですがね。でも人間ではなくても別の生命体をつづけるのは確かです。そして生物の生命力というものはずっとつづいていきます。当人が生きる意欲を失わない限りは」

 

1934年10月20日大阪府生まれ。57年大阪大学卒業。会社勤務のかたわらSF同人誌「宇宙塵」に参加。61年、「SFマガジン」第1回SFコンテストで「下級アイデアマン」が佳作入選しデビュー。63年に処女長編『燃える傾斜』を刊行し、コピーライターを経て65年より専業作家に。71年から発表し始めた司政官シリーズの長編第一作『消滅の光輪』で79年に第7回泉鏡花賞と第10回星雲賞、96年に『引き潮のとき』で第27回星雲賞を再び受賞。2019年11月3日逝去。2020年に第40回日本SF大賞功績賞受賞