前作『希望が死んだ夜に』の「こどもの貧困」に続いて、今回は「こどもの虐待」がテーマとなっています。
誕生日やクリスマスにプレゼントがもらえない、洋服や靴が小さすぎる、顔を洗ったり歯を磨いていない、いつもお腹を空かしているというネグレクトや真冬にシャワーを使って冷水を浴びせられる、寒いまま服を着させてもらえないような躾ではない虐待のシーンなどのリアルさに目を覆い鳥肌が立ち不快な気分になりました。
虐待の怖さは、虐待されている子ども自身がその「虐待」を否定していることです。
「自分は虐待されているわけではない、これは自分のためを思って親がしてくれていることなんだ」「自分が悪い子だから仕方ないんだ、自分はひどい事をされても仕方ない子どもだから」
また、現実にも小説上にも、貧困が貧困への連鎖を呼ぶ姿があるのは痛ましい事実です。
これは、安全な場所にいる第三者からの視点だと思います。
とても困難な状況に立たされていたとしても、誰か周りの人が気づいて見ていることを信じていたい。
自分だけだとどうしても視野を狭めてしまい自暴自棄になるから、殻に閉じ込めずに周りに手を差し伸べる勇気を持てることが必要なのかと身につまされて感じました。
<目次>
一章
断章一
二章
断章二
三章
断章三
四章
断章四
五章
1978年生まれ。2010年に第43回メフィスト賞受賞作『キョウカンカク』でデビュー。13年『葬式組曲』が第13回本格ミステリ大賞候補。同書所収の「父の葬式」が第66回日本推理作家協会賞(短編部門)候補。17年に発表した『希望が死んだ夜に』は「子どもの貧困」をテーマに社会派と本格が融合したミステリーと評判を呼び、19年本屋大賞発掘部門で最多票を獲得した。
