保険の営業マンの修一の前に一台のタクシーが現れた。
そのタクシーの料金メーターは、数万の数値を示していており、目的地へ到着する度に減っていく不思議なものであった。
目的地は、修一が行きたい場所というよりも、修一の運が良くなるきっかけとなる出来事が起こる場所だと、タクシーの運転者が言った。
運転手ではなく「運転者」という題名から、「運」の転機を気づかせてくれる者なのかと。
229P
「上機嫌でいなければ、運の転機には気づかない」
235P
「起こった直後は『最悪』と思っても、時間が経って考えてみると『むしろよかったんじゃないか』って思えることばかりですからね、人生なんて。だから、最初から『むしろよかったんじゃないか』って思うと、結構いろんなことが楽しめるもんですよ」
振り返ってみるとこの言葉がしっくりときます。
なにか大切なことに気づく転機には、この「最悪」な出来事が起こらないと気づかなかったのだから。
184P
「まず誰かと比べるのをやめるといいですよ。他の人の人生と比較するのをやめて、自分の人生に集中して、他の人はその人の人生を生きて、その人の役割を果たしています。
(中略)
まずは、自分が恵まれているということに心から気づけること。そこから始まります。そこに心からきづければ、自分ほど恵まれている人はいないんじゃないかって思えるようになっていきます」
五体満足でいられて、毎食ご飯をちゃんといただける、仕事もあって家族もいるし親しい友人もいることを鑑みると、なんてぼくは恵まれているのかと。
176P
「自分に都合のいいことをイメージしていれば、それが起こるなんて、プラス思考じゃないですよ。本当のプラス思考というのは、自分の人生でどんなことが起こっても、それが自分の人生においてどうしても必要だから起こった大切な経験だと思えるってことでしょう」
本当のプラス思考は、起こったことに対してプラスに考えることか。
169P
「いい時代に生まれたなぁ、と思えるとしたら、それはそういう時代に生まれて運が良かったと思うかもしれませんが、どっかからふっと湧いて出た、ラッキーで平和で裕福な時代に生まれ育ったわけではありませんよ。たくさんの血と汗と涙、そして努力、極論、命が費やされて作られてきたものです。<あった>ものではなく、命と引き換えに<作られた>ものなのです。
それぞれの時代に生きた人が、延々と続く命の物語の一部を精一杯、自分の役割を果たすよう生きてくれたから、次の世代は、前の世代よりも<いい時代>に生まれ育つことができるようになる。そして今あなたが、その命の物語というバトンを受け取って生きているんですよ」
運を引き継ぐ。いわゆる「運おくり」です。
先人が命を費やして作られてきた、この今、現代に生きている幸せを感じざるを得ないな。
「運は<いい>か<悪い>で表現するものじゃないんですよ。<使う><貯める>で表現するものなんです。先に<貯める>があって、ある程度貯まったら<使う>ができる。運は後払いです。何もしていないのにいいことが起こったりしないんです。周囲から<運がいい>と思われている人は、貯まったから使っただけです。」
ぼくは、「運がいい」と思う。
それは、信仰が深い家族、父母、先祖などからいただいた運を使っているから。
ぼくは運を貯めて後世のためにそのバトンをつないでいきたいと思った。
122P
「すぐには何も起きない」「種を蒔いたら収穫までに時間がかかる」
ものごとは、種を蒔いて花が咲いてから結実するものだ。
目標に向けて動くとすぐに結果を欲しがる世の中にいるとわかっているが、どのようにしていきたいか考えて行動してきた過程が大切だと思った。
このように本のなかには名言がたくさん散りばめられていた。
ぼくの心を奮い立たせてくれる言葉があり。
涙もろくなる出来事があり。
感慨深い思いもあり。
読み終わってからも一番最初に戻ったり、途中を見返したりした。
修一が急にギターを買ってきたのにも関わらず奥さんが驚かなかったのは?
不登校の娘さんが成功した結果は?
喜多川さんは、読者の気持ちと次への行動を盛り上げるのがうまい。
彼のファンになってしまう人が多いのが頷ける。
何が起きても楽しむというようなスタンスは、人生を楽しいものにする。
心の赴くままに生きていく方向性。
ワクワクする出来事、ドキドキする場所で家族や友人たちと楽しみたい。
「運」を使うだけでなく貯めることができるように、併せて良運を引き寄せることができるならば、このスタンスで生きていかない理由はないと思う。
<目次>
プロローグ
デッドライン
運転手
ポイントカード
幸せの種
TAXI
すべての努力は報われるか
蕎麦の味
実際あるけど、絶対ない
最後のレッスン
第二の人生
新しいスタート
エピローグ
1970年生まれ。愛媛県出身。2005年『賢者の書』(ディスカヴァー)にてデビュー。その後も意欲的に作品を発表。その活躍は国内にとどまらず、中国、韓国、台湾、ベトナムなどでも人気を博す。
著書に「賢者の書」「君と会えたから…」「手紙屋」など。
