猫のリリーがいないとこの喜劇的な物語は成り立たない。
この一匹のリリーを中心にして、マザコンやニート的な庄造や元妻の品子、現在の妻福子など登場人物たちを上手く繋げて話を面白く広げていた。
甲斐性のない庄造が鯵を口移しにリリー与えているところなど、実際に自分で猫を飼い溺愛していないと書けないような猫好き度を越えた表現があったと、猫を飼ったことがない僕にもそのように感じるくらいに。
庄造への未練から猫を引き取って庄造の心をつなぎとめようとする品子のもとから逃げ出したリリーがまた品子へ戻ってくるまでの間、ほんとうにリリーはどうしていたのか。庄造のところに行こうとしたのかもしれないし、老猫だったから庄造のところに戻れずにあたりを彷徨っていたのかもしれない。
自由奔放に生きている(と思われる)猫は、食事を与えてくれしっかりと保護をしてくれるところに戻ってくるのだな。
171P「誰にもまして可哀そうなのは自分ではないか、自分こそほんとうの宿なしではないかと、そう思われて来るのであった。」
庄造はリリーに隷属を拒否された模様。
隷属―①従いつくこと。他の支配下にあること。従属。②手下。配下。と広辞苑にあり。
愛とはほかならぬ隷属であり、幸福とは、隷属の幸福以外にありえないと解説に書かれてあった。
誰かに隷属できれば幸せなのか。
盲目的に従い頼って生きていければ幸せになれる人もいるものだと認めながら、ぼくには、自分の意志で生きていきたいから庄造のような生き方はなかなかできないものだと感じていた。
最後に、
この書名「猫と庄造と二人のおんな」は秀逸であった。
読む前から出てくる人物や内容をわかりやすく表していて、生きものたちの序列も納得できるものであったから。
