「金は人のために貸せ」
深く響く金言がぼくのこころに刻み込まれる。
700頁を超える大作。
2006年から2009年にかけて連載された長編小説
だが古さをまったく感じさせない。
文庫本2冊にもわたる文量も感じさせない。
内容の飽きも感じさせない。
ワクワクドキドキしながら、次から次へと引き込まれて一気に当日で読み終える。
自らの宿命と真摯に向き合う誠実さ
他者を思いやる感受性、正義感、嗅覚の良さ。
理想と正論と機知で戦う主人公。
読んでいる自分も体が熱くなる。
主人公の決断の勇気が十二分に堪能できる。
零細工場の息子と大手海運会社の御曹司。
育った環境が違うこの瑛と彬のふたりの人生が交差するところに火花が散る。
<目次>
工場と海
マドンナ
父と叔父たち
進路
就職戦線
バンカーの誕生
BUBBLE
ロザリオ
父の遺言
叔父たちの策略
後悔と疑惑
挑戦、そして挫折
内憂外患
お荷物ホテル
最終章 最終稟議
解説 村上貴史
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞、作家デビュー。『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞を、『下町ロケット』で直木賞を受賞。他の作品に、半沢直樹シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』、花咲舞シリーズ『不祥事』、『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』『民王』『七つの会議』『ようこそ、わが家へ』『陸王』などがある。
313-314P
会場から起きた笑いに、羽根田は真顔のまま続けた。
「銀行は社会の縮図だ。ここにはありとあらゆる人間たちが関わってくる。ここに来る全ての人間たちには、彼らなりの人生があり、のっぴきならない事情がある。それを忘れるな、諸君。儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ。金貸しとバンカーとの間には、埋め尽くせないほどの距離がある。同じ金を貸していても、バンカーの貸す金は輝いていなければならない。金に色がついていないと世間ではいうが、色をつけなくなったバンカーは金貸しと同じだ。相手のことを考え、社会のために金を貸して欲しい。金は人のために貸せ。金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる。だが今日のところは私の説教などどうでもいい。いまは素直に、我らが誇れるバンカーが誕生したことを称えたいと思う。すばらしい粉飾だった」
笑いが起きた。「そして、すばらしい分析だった。君たちのような新人を当行に迎えることが出来て、私は誇りに思う。ようこそ、産業中央銀行へ。君らは私たちの新しい仲間だ。一緒に戦う仲間だ」
