【No.359】向田理髪店 奥田英朗 光文社(2016/04) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

「絆」と「縁」

こんな床屋さんがあったら行ってみたい。

 

北海道苫沢。

モデルは財政破綻した夕張市か。

北海道の寂れてしまった炭鉱町。

過去に栄えたものの過疎化の町にある一軒の理髪店。

変化のない毎日、娯楽もあまりなく、噂がすぐに町中に広がる、住んでいる一人一人の顔がわかるようなところ。

 

地方ならではの人間模様が繰り広げられる。

誰もが勝手な意見をこぼしに来る店の日常を描く。

他人事ではなくどこにでもある風景。

おかしくて身にしみて愉しくて心がほぐれる物語。

こころがほっこりする。

 

 

 

 <目次>

向田理髪店  

祭りのあと   47

中国からの花嫁   89

小さなスナック   137

赤い雪   177

逃亡者   215

 

 

 

 

1959年岐阜県生まれ。2002年『邪魔』で第4回大藪春彦賞受賞。’04年『空中ブランコ』で第131直木三十五賞受賞。’07年『家日和』で第20回柴田錬三郎賞受賞。’09年『オリンピックの身代金』で第43回吉川英治文学賞受賞

 

 

 

 

 

 

38P

「おまえね、確かにおれは出向したよ。お察しのとおり片道切符だよ。でもな、仕事で負けたからって、シッポ巻いて田舎に逃げ帰るような男じゃないぞ。馬鹿にするな。お気楽なのはおまえだ。胃の痛くなるような仕事をしたことがあるのか。プレッシャーで夜も眠れない経験をしたことがあるのか。いいよな、競争のない散髪屋で。毎晩ぐっすり眠れるだろう」

今度は康彦が頭に血が昇った。

「なんだと。オメ、散髪屋を馬鹿にしてるべ」

 

 

 

132P

「おれも都会に生まれればよかったって思うことはある。苫沢じゃプライベートも遠慮もあったもんでねえ。みんな小さい頃から知ってっから、恰好の付けようがねえ。いっぺん恰好悪いことをしてしまうと、一生話のタネにされる。だから宿命だと思ってあきらめるしかねえ。大輔君、農業をやめるか?やめねえべ。苫沢から出てくか?出て行かねえべ。だったら開き直るしかないっしょ。みんながひとつの池の中で、同じ水飲んで生きてるべや。それが苫沢だ。染まれ。染まって自分なんかなくしちまえ。楽に生きられるぞ」