【No.329】イノセント 島本理生 集英社(2016/04) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

ぼくにとって初島本理生作品。

 

自分を救ってくれるのは無償な愛なのか、

それとも見返りを求めている愛なのか。

 

期待すればするほどに裏切られることへの不安が募る。

 

比紗也の無邪気さや如月の無垢さ、真田の純粋さ。それぞれのイノセントの裏と表があって。誰かを好きになることと愛することの違いの大きさを感じた。

 

簡単に好きになれるけれども、相手をまるごと受け入れて愛することは、ものすごく難しいことなのかもしれない。

 

ラストに比紗也にも救いと希望があって、真田とのハッピーエンドがあってとってもよかったとぼくは思う。

 

 

 

1983年生まれ。2001年『シルエット』で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞

 

 

 

35P

夜の中で街の明かりに照らされた横顔を盗み見ると、数年前にくらべて輪郭がシャープになっていた。目元には大人の憂いと色気が足され、それでいてピンク色の唇はあどけなさを留めている。真田は悔しくなる。ますます好みの雰囲気になっている。

 

 

74P

酔うと香水よりもキツくなる男たちの口臭。欲情しながらも選別する眼差し。綺麗に着飾るほど、鏡の中の自分は醜く見えた。

 

 

289P

真田から腕をほどいて離れると、不安げな顔をしたので、軽く笑って手をつなぐ。指の間に指を入れ込むのは若者っぽくて慣れないと思いながらも、体がほぐれて力が抜ける。

訊きたいことが訊ける、言いたいことが言えるというのはこんなに清々しいことかと思った。一緒にいてもお互いずっと緊張していたことに気付く。傷に触れないように、訊いてはいけないことに触れないように。比紗也が強く手を握り

「ただいま」と呟いた。真田が念を押したくなる気持ちを堪えて、短く頷くと

「おかえり」とだけ返した。

 

 

298P

ゲートへ向かう人々は、夢を見終えた後というよりは、夢が叶った後のように高揚しているようだった。

車に戻った真田は、比紗也の目が涙に濡れていることに気付いた。