江戸の歴史にまつわるおもしろくてためになるトリビア短文集です。
数ページ単位で一つの話題がまとまっていて愉しく説明がなされています。
文章も簡潔なのでわかりやすくて読みやすい。
磯田道史さんから、映像や書物から歴史を学ぶ楽しさを教えていただきました。
「歴史には勘所というものがある」
235P
「したがって、ここにある文章は、歴史のトピックを、一見、何の脈略もなく、ならべたように見えるかもしれないが、そうではない。広く深く、日本史を見渡せるような、いってみれば「歴史の肝」になる話だけを、かなり厳しい目で選んだつもりである。表面上は、楽しく読めるように選んでいるが、日本史の重要人物や決定的要素を、意識的に選んで書き込んである」
新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします(^^)
<目次>
信長の好奇心
なぜ信長は殺されたのか?
秀吉の艶書
お稲荷様も脅した秀吉
家康の人事
家康の庭訓
朝寝坊を禁じた早雲
天才軍師・竹中半兵衛
軍用犬を飼っていた太田資正
宇喜多秀家の子孫 ほか
あとがき
文庫版あとがき
磯田道史さん
1970年、岡山県生まれ。2002年、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)「武士の家計簿」で新潮ドキュメント賞を受賞。他の著書に「殿様の通信簿」など。
12P
「天下を持っても、貧しさに極まっても、それは昨日までの過去のこと。上様とて明日はわかりませぬ。今日一日のみ、上様は天下の主として楽しまれ、わたしも今日一日のみ極貧に苦しんでいるだけです」
これを聞いて、信長は一瞬がくぜんとした。結局、人間は今だけを生きている。極貧にあえぐ男は、自分にその真理を告げたのである。やがて信長は満足そうにうなずき、男にたくさんの衣服金銀等を与えて帰したという。
99P
(寺田)寅彦は、(夏目)漱石から二つのことを教わったと書いている。自然の美しさを自分の目で発見すること。人間の心の中の真なるものと偽なるものとを見分け、そうして真なるものを愛すること。この二つである。
232P
古文書は解難い。古文書はそのままでは、なんのことやらわからないが、史家がこれを読んで噛み砕き、牛が乳を出すが如くにすれば、世人はその味を甘受できる。良い草を喰まねば、良い乳は出ない。だから、史家は、良き草、すなわち、良き史料をたずねて書物蔵に入り、牛が悠然と草を喰むが如く、ゆっくりと史料の頁をめくる。
233P
書物蔵のなかで、そういう人物、そういう筆跡をみるたびに、この人は忘れてはならない、このことも忘れてはならない、と思うことが多くなった。歴史に限らず、人生経験のなかで「これは忘れてはならない」と感じたものは、いまを生きる我々にとって、糧となる。古文書のなかで、忘れてはならないと感じたこと、そのちいさな断片を拾って、書き留めていくうちに、いつもまにか、この稿を成すにいたったように思う。
