「境遇」という文字がよく出てきます。これが題名でありキーワードに。
表紙には、海の見える高台にある児童養護施設が写っています。
青いリボンが漂い二人の女の子がベンチに座って絵本を読みあっています。
養護施設で育った陽子と晴美。
同じ境遇のふたりをつなぐこの青いリボン。
人は生まれる環境を選べないけれども、その後の人生は自分の意思で自分の手で築いていくことができます。
陽子の息子を誘拐した犯人が示す真実が明らかになるときに、ふたりが歩んできた境遇の意味が改めて浮き彫りになります。
人の内部をえぐるように描き出す湊かなえさんの作品に圧倒されることが多いのだが。
期待や予想を裏切るどんでん返しもなく物語がどんどんと進んでいきます。
こんな展開でも次が待ち遠しくて、わかるまですぐに読破してしまいました!
いつもの湊さんのようにドロドロしていない素直で分かりやすい物語でした。
青いしおりが2本ついていました。
これは意図した心憎い演出だと読み終えてからわかりましたけど。
<目次>
あおいリボンはおかあさん
ムスコヲブジカエシテホシケレバ
樅の木町殺人事件
真実の公表
それから
1973年広島県生まれ。「聖職者」で第29回小説推理新人賞、同短編を収録した「告白」でデビューし、本屋大賞を受賞。ほかの著書に「少女」など
19P
自分は女性として不完全であるという失望感、将来への不安、そんな理由で心の中にぽっかりとあいた空洞は、リゾートホテルでも、高級ブランド品でも埋めることはできず、子供を産むことはできなくとも、幼い命をこの手で立派に育てたいのだ、と彼に強く訴えたらしい。
22P
どうしてこんなことになったのだろう。助けてほしい。
陽子。
わたしの気持ちをわかってくれるのは、あなただけ。
―私たちが親友になれたのは、同じ境遇だからなのかな。
一度だけ、陽子にそう訊かれたことがある。
わたしは生後まもない頃、Y市内にある「朝陽学園」という児童養護施設に預けられ、高校を卒業するまでの十八年間をそこで過ごした。
89-90P
どんなに道を外れた出来事も、知らなければ罪にはならないのだろうか。
知らなければ罪にはならないのだろうか。
忘れられれば罪にはならないのだろうか。
罪にならなければ、罰を受けることもなく、償いをする必要もなく、何食わぬ顔をして幸せに暮らすことが許されるのだろうか。
いや、許されるはずがない。
ならば、知らせてやればいい。
大切なものと引き替えに。
