「愛能う限り」
湊かなえさんをまた手に取って読んでしまいました。
湊さんらしい母と娘との独白が続きます。
女性には母と娘の二種類があって、この二種類の女がいることで葛藤が生まれます。
娘は母に庇護されたいと望み、母性を持ち合わせた母も庇護される立場でありたい。
こう強く願うことによって、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性がいます。
母性を持つ女は母で、母性を持たない女が娘であるということか。
あいかわらずぼくには母性の意味がつかめていません。
幸せな家では、あんなことは起らないだろう。
いわゆる不幸な家なのだから起こる連鎖反応だろうか。
以心伝心だけでは、相手に真意がわからないし伝わらないのですよ。
他人はもちろんのこと家族であっても、お互い腹を割って話し合わないと本音が伝わらないということを、ぼくは他山の石として教えていただきました。
うちではそうならないように話し合いをしていきたい。
<目次>
第一章 厳粛な時
第二章 立像の歌
第三章 嘆き
第四章 ああ 涙でいっぱいのひとよ
第五章 涙の壺
第六章 来るがいい 最後の苦痛よ
第七章 愛の歌
◎1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、’09年には本屋大賞を受賞した。’12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞
35P
漆黒の闇の中で思い描くのは、いつも同じこと。
あのまま夢の家で過ごせていたら、どうなっていただろう。
特別な気候でもないのに、すべての音が消えてなくなり、空気の流れる音だけが耳の奥に深くゆっくりと響き渡る夜がある。過去の一番幸せだったときの記憶を呼び戻す時間。思い出に浸る幸せな時間。
その中でわたしは何かを必死に探している。何かとはなにか。だけど、すぐに朝が訪れて、現実を目の当たりにしなければならないことも頭の片隅で認識しているため、完全に浸りきることはできない。何かの正体もわからない。
それが、わたしという人間なのだろう、きっと。なのに、今いるこの闇は永遠に明けないような予感がする。だから、思い切り記憶を呼び戻し、人生に足りなかったものを補いながら、深い眠りに就くことにしよう。
52P
母性、とは何なのだろう。
隣の席の国語教師に辞書を借りて引いてみる。
―女性が、自分の生んだ子を守り育てようとする、母親としての本能的性質。
252P
「そうよ。あなたは世の中の厳しさを知らないから、二者択一で自分で望んだ片方は必ず手に入れると思い込んでしまうのよ」
