【No.308】蜘蛛と蝶 大石 圭 講談社(2015/08) | 朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

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読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。



109P「奇跡は起こらないから奇跡なのだ―。」


「蜘蛛と蝶」というタイトルは内容を知るとピッタリだ。




相手を探している人や婚活をしている人だけじゃなく。


こういったシチュエーションはあり得るんじゃないかな!



インターネットやSNS上で知りあいとなるような可能性がある人なら起こりえる出来事・事件なのかも。





毎日、毎回、同じスーツとネクタイであることや、はじめに自己紹介した名前である「一希」ではなく「こうへい」と彼の友人が言ったのを聞いたとき等々。






人の心をもてあそぶような輩は許せない。



客観的に考えるとにかおかしいと感じないのかどうか、などと怒りながら読み進めてました。






多岐川瑠璃子は、この彼の本性を分かってもよい伏線がいくつもありました。



でも、それに気づけなかった。


彼女はそれに気づきたくなかったのかもしれない。






ラストには、スッキリしないような思ったようなうれしい展開が待っています。







 <目次>

プロローグ

第一章 

第二章 

第三章 

第四章 

第五章 

第六章 

第七章 

第八章 

最終章 

エピローグ

あとがき 









◎1961年東京都生まれ。法政大学文学部卒。「履き忘れたもう片方の靴」で第30回文藝賞佳作を受賞しデビュー。ほかの著書に「1303号室」「甘い鞭」など。







17P

彼女の人生には特別な喜びもなかったし、楽しみと呼べるようなものも見当たらなかった。だが、同時に、これといって悲しいことがあるわけではなかったし、耐え難いほどの苦難に直面しているというわけでもなかった。

「幸せか?」と尋ねられたら、「ええ。たぶん」と答えただろう。瑠璃子には家族がいたし、安定した仕事もあった。

それでも、……平凡な日々の繰り返しの中で、なすすべもなく年を重ねていくことを考えると、焦りや不安のような感情が胸に去来した。







68P

その朝、瑠璃子には、目に映るすべてのものが、それまでとは違って見えた。耳に入るすべての音が別の音に聞こえた。

目を覚まし、自室の窓をいっぱいに開けた時-真夏の朝日に照らされた木々の葉の輝きが、それまでとは違って見えた。耳に飛び込んでくる鳥たちの声が、それまでとは別のものに聞こえた。

髪をそよがせる風のにおいが、胸いっぱいに吸い込んだ夏の朝の空気さえもが、きのうまでとはまったく別のもののように感じられた。





133P

瑠璃子の誠実さ、真面目さ、相手へのいたわりや思いやり、努力を続ける力、人を信じようとする気持ち、困難に向き合おうとする心、決して人を裏切るまいとする信念……それらはどれも彼が持ち合わせていないものだった。