堂場さんの警察やスポーツ小説ものは読んだことがありますが、後ろから急かされるようにしてこれも一気読みしました。
東京にある神田神保町をよく知っている人にとっては面白いのではないかな。
知っているお店や行ったことがある場所、見たことがある風景などがたくさん出てくるから。
でも、知らない人にでもこの町を訪れたくなるように描かれているように思います。
生まれも育ちも神保町の明央大学准教授、吾妻幹が探偵役となっています。
オークションで競り落とした1億2千万円のヴィンテージギターを巡る事件を解決していくミステリーです。
◎1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。警察小説をはじめスポーツ小説など多彩な分野で活躍
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そんなことより、問題はこの喪失感だ。「心に穴が空いたようだ」とはよく言うが、そういうレベルの話ではない。痛いのだ。もしかしたら心筋梗塞の痛みとはこういうものではないか-経験したことのない凄絶な痛みと聞いている-と考え、胃の辺りを拳をねじ込む。
あり得ない。
吾妻はこれまで、母親をはじめ多くの人間を見送ってきた。人はいとも簡単に死ぬもので、昨日まで元気に笑っていた人間が、翌日には冷たい骸になっていることも珍しくはない。しかし、殺されたとなると話は別だ。他人の手で人生を終わらされるなど……。