死ぬことはけっして避けらないことです。
自分より先に親が亡くなるのも覚悟していなくてはならないことなのかな。
疎遠であったり仲がよくなかった家族が、突然訪れる相続に際して真剣に向き合わなければならなくなる事態が簡単に想定されます。
兄弟姉妹でも家庭をそれぞれ別に持つと、守るべきものがそれぞれ別のものとなります。
相続によってお金や財産などが絡むと人の絆ってこんなに簡単に脆くて壊れやすいものなのかと思いますね。
お世話していた祖父の相続の権利がない容子さん(お母さん)のしなやかさ、したたかさも魅力的だな。
具体的にエンディングノートや遺言など形で事前に準備することのほかにも、心の準備は、今からしておいても早くもないして遅くはないと思うのです。
<目次>
プロローグ 5
第一章 真壁りん 8
第二章 植田大介 41
第三章 真壁渓二郎 70
第四章 真壁靖子 104
第五章 真壁陽一郎 138
第六章 真壁風子 175
第七章 真壁波子 207
第八章 真壁容子 250
◎1979年生まれ。2009年「マタタビ潔子の猫魂」で第4回ダ・ヴィンチ文学賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「海に降る」「真実への盗聴」など
256P
―さようなら、鱗太郎さん。
あの時、私の知っている真壁家は終わってしまったのだろうか。結び目となる存在が消えて、親族たちはバラバラになる。それぞれの事情が、利害が、互いに交差し、衝突するようになる。
いや、祖父が生きていた頃からとうに、終わりははじまっていたのかもしれない。親子だけで過ごす蜜月は終わり、他人が交ざるようになり、守るべきものが他にできて、交わす言葉の端々に、遠慮や、気遣いや、妥協や、嘘や、秘密が生まれる。それでも、親戚同士が集まると自然とどこからかわいてきた、真綿に包まれたようなあたたたかな空気は、大人たちの少しずつの我慢の上に成り立っていたのだ。みんな頑張ってくれていたんだ。祖父や―きっと幼い姪たちのために。
それなのに、昔と同じ関係でいたい、なんて、たぶん、もう何もかもが遅いのだ。
