ある意味、湊かなえさんのように一人称語り手喋くり口調で物語は続きます。
淡々と重たい雰囲気で次第のとおりに進んでいきます。
神様のような人格者として慕われた校長の通夜の中、故人を慕っている年齢も職業も多様な参列者からある疑惑が持ち上がるのです。
「四 通夜ぶるまい」から急に展開が面白くなりました。
そこからは、忙しくしてもう一気読みです。
この本の帯に書いてある通り「驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ」でした!
例えば「通夜ぶるまい→艶ブルマ」と勘違いするなど途中にユーモアもあり(こういうのが好き!)、最後の最後のどんでん返し、予想外の展開にオチが面白いかな!
元芸人の著者さんに、まんまと騙されました。
「火花」の又吉先生のように、芸人さんって感性が鋭くて面白いものが書けるのかもしれないな。
<目次>
一 読経
二 焼香
三 法話・喪主挨拶
四 通夜ぶるまい
五 控室
選評
◎1985年生まれ。茨城県出身。高校卒業後、6年間お笑い芸人として活動。2014年に『神様の裏の顔』(受賞時「神様のもう一つの顔」を改題)で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー
344P
あの時の電話。苦しそうに乱れた呼吸で「一度帰ってこないか」と言った後、父はこう続けた。
「一度、ちゃんと……話し合いたいんだ。将来の、こととか……」
でもあたしは、その提案を突っぱねた。
「話し合いなんてしたくない。どうせお見合いしろとか言うんでしょ?お父さんは、あたしのことなんて全然分かってくれてない!」
「そんなことはない。……父さんは、お前のことは……何でも分かってるよ」
そして、父はごほごほと咳をした後、なんとも切なそうな口調で言ったのだ。
「なあ、このまま……独身でも、いいのか」
―あの言葉を、心の中で何度も反芻してみる。
あれは「独身でも」ではなかったんじゃないか。
「毒で死んでも」だったんじゃないか。
父は、あたしに毒を盛られていたことに気付いていたんじゃないか。だからあの電話の後、庭の畑の野菜をたくさん送ってきたんじゃないか。いつも段ボールに必ず入っていた手紙も添えられていなかった。あれは、庭の畑にヒ素入りの水を撒き、冷蔵庫の飲み物にヒ素を混入していたあたしの行動に、死に際になって勘付いたのだという、父からの無言のメッセージだったんじゃないか……。
