人が殺されないミステリーも好き。
西尾さんは、初めてでしたがとても軽くて読みやすい。
筋の運びのおもしろさで読者をひきつける小説家ですね。まさにストーリーテラー。
読み始めると後を引きずりながら、最後まで止まりません。
ミステリーとしての謎解きは、さほど斬新ではありませんが、ストーリーの流れやテンポが気持ちよかったですね。
終わりを見ていると、隠館厄介さんと掟上今日子さんのこれからの展開がとても気になります。
あとがきにシリーズ化をと銘打っていますので、続巻を楽しみにしておきますね。
<目次>
第一話 初めまして、今日子さん 5-71
第二話 紹介します、今日子さん 73-128
第三話 お暇ですか、今日子さん 129-190
第四話 失礼します、今日子さん 191-253
第五話 さようなら、今日子さん 255-322
☆1981年生まれ。第23回メフィスト賞受賞作「クビキリサイクル」で2002年デビュー。ほかの著書に「化物語」など。
21―22P
どんな事件でも一日で解決する。
それが置手紙探偵事務所の看板であり、僕も最初、あの面妖な「多体問題事件」に巻き込まれた際、その魅惑的な言葉に惹かれて飛びついたのだが、しかしそれは「最速の探偵」としての売り文句ではなく、「忘却探偵」としての注意書きだったことを、すぐに知ることになった。
名探偵・掟上今日子。
彼女の記憶は一日ごとにリセットされる。
医学用語で言えば前向性健忘の一種となるのだろうが、ともかく、どんな調査をしても、どんな聴取をしても、彼女はそれを寝て起きたら忘却してしまうのだ。
誰が相手だろうと、どんな出来事だろうと。
初対面と初体験を無数に繰り返すことになる。
長期にわたる事件を担当できないという意味では、探偵として致命的な特性だが、しかしひっくり返せばそれは、あらゆる機密事項に平気で踏み込めるという、他のどんな探偵も持たない圧倒的な特性でもある。
何せ忘れてしまうのだ。
これ以上確実に、探偵としての職業倫理、即ち守秘義務を保持する方法はなかろう―なので彼女の事務所には、人には言えない悩み、絶対に露見してはならない事情を抱えた依頼人が殺到する。
基本的に一日以内で解決できない事件は受けないし、またその性質上、予約を一切受けつけない仕事のやりかたは、業界内でも賛否があるけれど、そんなシステムのお陰で今日のように、突発的に助けを求めても応じてくれたりもするわけだから、僕にとっては間違いなく五指に入る名探偵である。
