パレートの法則にも誤算があるという意味だ。
人生において、当てはまらない場合もあると言う。
どんな場合なのかと考えながら、終わりにはその意味がわかりました。
柚月裕子さんの作品は初めて。ご縁ですね。
登場人物が少ないからこそ、ストーリーのつながりがわかりやすかったですね。
犯人が彼だと思っていたら、じつは違っていた展開が面白い。
おわりまで食い入るようにして読み終えてしまいました。
141-142P
「生活保護のことを話していたら、働き蟻の法則だな、って言って、どんなに一生懸命やったって堕落者はいなくならない、そう言いました」
小野寺は、ふうん、と鼻を鳴らすと、聡美の問いに答えた。
「ある大学の教授が蟻を使って実験したところ、ある一定数のよく働く蟻と、働かない蟻に分かれる、というデータが出た。そこで、働かない蟻を取り除き、働く蟻だけにしてみた。すべての蟻が働くと思うだろう。だが、違った。勤勉な蟻だけにしても、そのなかの二割程度は、働かなくなるという結果が出たんだ。それが、若林が言った働き蟻の法則だ」
142P
小野寺の話から聡美は、似たような法則でパレートの法則と呼ばれているものがあることを思い出した。たしかイタリアの経済学者が発見した統計モデルだったはずだ。
小野寺は補足した。
「80対20の法則とも呼ばれていて、ある分野における全体の八割を、全体の一部である約二割の要素が生み出しているというものだな。たとえば、社会経済だったら、全体の二割程度の高額所得者が社会全体の八割の所得を占めるとか、マーケティングだったら、二割の商品が八割の売り上げを作るとか言われている」
335-336P
「人間は、法則や数式で成り立っているものではない。
わたしたちひとりひとりが努力して自立し、法則に基づいた社会ではなく、すべての人がひとりの人間として見てもらえる社会を実現したい。そのためにわたしは、ある目標を立てている」
記事の最後は、短い一文で結ばれていた。
―将来、ケースワーカーになりたい。
(中略)
人の人生が、数字の羅列である法則に当て嵌まるとは、聡美には思えなかった。
さまざまな理由で、生涯、自治体の援助を受けながら生きる者もいるだろう。が、援助を糧として自立していく人間も必ずいる。」
◎1968年岩手県生まれ。「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞で大賞を受賞しデビュー。「検事の本懐」で第15回大藪春彦賞を受賞。
<目次>
第1章
第2章
第3章
終章