321P「苦しくても生きなければいけない。
生きていれば、いつか
苦しさを忘れることもできる。
そう信じてる」
池井戸さんが、多くの登場人物を通じて語っている言葉のなかに、何度か救われたことがある。
人生で迷っているときなど、空いたピースがぴったりとそこにはまるときにだいたいこう思う。
「やっぱり読書っていいな!」と。
☆「この作品は、銀行員だった私が実際に体験した出来事をモチーフにしています。
企業の一員として生きていくうえでの、さまざまな矛盾や苦しみ。自分の考えを貫き通そうとする主人公の苦闘―。銀行という職場が舞台になっていますが、ここに描かれた人間関係は多くの人に共通するテーマです。(中略)
書きたかったというよりも、書かなければならなかった小説ともいえるでしょう。」“著書の言葉”池井戸 潤さんから抜粋
読んでいると、ココロに強く訴えてくる文章がある。
とても印象的な内容や素敵な箇所だ。
ぼくにとっての名言になるのかもしれない。
この小説の題名となった「果つる底なき」の文字を見つけた時は、正直うれしかった。
やっと見つけたという風な感激や解放感もある。
ぼくはこの箇所にとても惹かれる。
250P
私は閉じた瞼の裏側で、……に対峙する。
形もなく、概念もないもの。あるのはただ、醜い思念のみ。
まさに暗渠だ。塊の深淵、果つる底なき暗澹たるもの。
それは単に価値観などという尺度で説明しうる範囲を超越している。
始まりも終わりもなく、きっかけすらつなめない狂気、これ以上、こいつを生かしてはおけない。
坂本のために。紗絵のために。曜子のために。菜緒のために、柳葉のために。古河のために。そして―私のために。
<目次>
第1章 死因
第2章 粉飾
第3章 依頼書
第4章 半導体
第5章 回収
★1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒業。三菱銀行を経て、98年『果つる底なき』(講談社文庫)で江戸川乱歩賞、2010年『鉄の骨』(講談社文庫)で吉川英治文学新人賞、11年『下町ロケット』(小学館)で直木三十五賞を受賞

