※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#786  女子高生と野獣

 

 

 

(本放送)・・・1976年12月15日

(再放送)・・・2020年6月25日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・伊賀山正光

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷隆)、

松木部長刑事(早川雄三)、佐田刑事(立花直樹)、戸川刑事(一の瀬玲奈)、

石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

神保なほみ、小野ひずる、仙波和之、渡辺康子、丹羽たかね、加藤真知子、

相馬剛三、山根久幸、小沢悦子、本多洋子、那智映美、宍戸真由美、高桑和、

吉沢優子、吉岡節子、和田明美、穂積隆信、堀勝之祐、西園寺宏、曽我町子、

小沢左生子、梅津栄、佐竹明夫、島宇志夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

十七歳・・・。

女子高生・・・。

だが、ひとたびセーラー服を脱いだとき、

そこには既に成熟しきった女の姿がある。

まさに乱れた今日(コンニチ)に、またひとつ事件が・・・!

・・・(スナックのカウンターで、トップ屋に話す雑誌記者、女カメラマンの場面)

雑誌記者  「降りろ!? せっかく掴んだこのネタを、捨てろっていうんですか?

       冗談じゃない! 妊娠の診断書をネタに、謎の令嬢を強請るスケ番

       グループ、おまけにその現場を、津村くんのカメラがバッチリ

       撮っているんですよ!」

女カメラマン 「まだあるわよ。 あのお嬢さん風の2人にも興味があるわ。 

       問題は謎の令嬢が、スケ番グループから買い取った診断書よ!

       何に使ったか・・・!?  なぜ強請られたか・・・!?」

・・・(ナレーションに戻る)

深追いがもたらした、人間ひとりの命・・・。

なぜ?

何が?

次回、特捜隊、「女子高生と野獣」、御期待ください。  

 

※上記の会話場面は、それぞれ、トップ屋=安西、雑誌記者=みやべ、女カメラマン=津村を指す。

 

 

(備考)・・・

・鑑識員(西郷隆)の出演場面は見当たらない。

 

 

(視聴録)・・・開始約13分前半まで

 

ある日の早朝、練馬区きくのだいの公園での男性の死体発見の報を受け、三船班は現場に到着、捜査に入る。死亡推定時刻は午前0時、遺留品の名刺・身分証明書から、身元は週刊ゼロの記者・みやべしんぞう(西園寺宏)と判明。畑野・石原は編集部へと向かう。

遺体写真をみた編集長(堀勝之祐)は驚き、みやべとコンビを組むことの多い、女カメラマン・津村(曽我町子)を呼び事情を聴く。津村は、昨夜もみやべと取材に出かけていたこともあり驚くが、その取材にトップ屋・安西さぶろう(仙波和之)も同席していたという。これに編集長は、安西が既に辞めた元社員であることから良い顔をせず、みやべが最近独断で取材を進めることにも苦言を呈すのだった。続いて津村は、みやべ・安西と取材中に5人の女子高生との喧嘩騒ぎを話し、そのときの写真を畑野・石原に提出する。来週号の特集に併せ女子高生売春グループを追っていたとのことだが、そこに安西が割込みしたのが喧嘩の原因で、収まると3人一緒に、新宿のスナック・三銃士へ飲みに行ったことを話す。

 

特捜隊本部では、この写真を戸川が少年課に照会、高校中退の山根とも代(那智映美)、現役女子高生・早苗(宍戸真由美)以下3人(本多洋子、高桑和?、吉沢優子?)は、桜隊というスケ番グループであると報告すると、田中係長・三船主任・松木は顔を曇らせる。

 

スナック・三銃士を訪れた畑野・石原は、ママ(丹羽たかね)、ホステス(和田明美?)に聞きこむ。店での3人は、喧嘩騒ぎの中にいた令嬢風の2人(後に、進藤由起子=神保なほみ、小田切慶子=小野ひずる、と判明する)の存在が気になるとともに、由起子がスゲ番グループから買い取った(妊娠の)診断書を何に使ったか? 由起子はなぜスケ番グループから強請られていたのか? を話していたことが明らかになる。ところが、安西は急にこの件から降りるよう勧め、みやべは憤慨する。どうやら安西は、由起子・慶子の写真も掲載することに納得いかない様子で、午後11時過ぎに店を出たという。そのとき、ライターを忘れていったが、みやべはそれを掴み「あいつ、ぶん殴ってやる」といって、後を追っていったことも判明する。

 

畑野・石原は、佐田と行動中の三船主任に報告、店を出た時刻と死亡推定時刻との関連が高いことを指摘する。佐田は現場にライターが無かったことを訝しがるが、石原は安西が奪ったなら納得できると主張。そして三船主任は、安西をあたるよう畑野・石原に指示を出す。

 

畑野・石原は安西の住む石神井のアパートを訪れるも不在、新聞紙も溜った状態だった。そこで、隣室の主婦(小沢悦子)に聞きこみ、すると安西の妻(未詳)は半年前から板橋区医師会病院に入院、安西もここ2,3日帰って来ておらず、電話での言付け(註・折り返し電話をするよう依頼されたこと)を伝えられず困っているという。畑野は、その返電先の電話番号メモを代わりに受け取るのだが・・・。

 

 

当作の序盤は、サブストーリーとして、スケ番グループをマークするみやべ・津村、レストランで食事をする由起子・慶子をマークする安西の場面が描かれます。そして、スケ番グループが、早苗から買った妊娠診断書について由起子を呼び出し、路地裏で強請る場面となるわけですが、そこを救ったのが安西であり、応援に駆けつけたのがみやべ・津村でありました。そして、そのときの写真には由起子が(註・慶子も?)映っていましたが、後の戸川の照会では名前不明でありました。

 

さらに、このサブストーリーは、特捜隊本部でのスケ番グループ論議の後、進藤物産社長・進藤(穂積隆信)の邸宅前を張り込む安西の場面となり、邸宅に電話を掛けます。電話に出た女中・千代(吉岡節子)に由起子へ取り次ぐよう頼みますが、これを聞いていた夫人・たえ(小沢左生子)は訝しがり、由起子は一緒にいた慶子のようすから留守だからと断ることにします。これらから、安西の狙いは由起子にあることがわかりますが、これがみやべの死とどういう関係があるのか? そして、診断書の謎は? その後には、進藤の先輩でもある経済学者・久米山修輔(佐竹明夫)、その男秘書(山根久幸)、その女秘書(加藤真知子)、慶子の両親(梅津栄、渡辺康子)、慶子の家・小田切印刷所の債権者・加藤(相馬剛三)など、一癖ありそうな人物が登場、みやべ殺害事件と関係があるのか? など興味を引く後半となります。

 

 

当作は、脚本・佐々木武観、監督・伊賀山正光と、自分なりに先入観を抱いてしまう組み合わせであり、どうなることかと思いながらの観賞でした。#785 暴走時代

 

 

が男子学生を主に描いたドラマであり、当作は女子学生を前面に出している点は、「対比」を思い起こす番組編成であります。比較という点では、当作の方が刑事ドラマ、人間ドラマとも偏りを無くそうと、バランスをとっているように見えます。

 

しかし、奏功しているかというと、これは脚本上の問題だと思うのですが、ストーリーがよくわからないまま展開しているような構成でした。ネタバレになりますが

(1) 診断書の件で、「ある人物」が、主体としてのスケ番グループと由起子との二兎を追うスタイルをとりながらも、実はすでにそれなりの真相を掴んでいたというのは、あまりにご都合的であること

(2) 「別の人物」が、「ある人」に「これから、あなたの○○に会わなければならない」と語ったのが、結果的に○○でもなかったこと

が例として挙げられます。特に(2)の点は、後半での出来事とはいえ、事件の真相のミスリードともなりそうなうえ、「ある人」に隠された秘密があるような印象を誤って与える効果を持ちました。そして、これがラストで「なあんだ」ともなってしまう、期待外れの効果を出してしまい、いかがなものかと思います。

 

あるいは、真犯人にサイコパス的な要素を持たせようと、真相解明の際に真犯人に「特殊な顔つき」をさせたのは演出だとは思うものの、それなら、ある場所での面談で冷静な態度をとる場面は、もう少し工夫ができなかったのかという気持ちがあります。音楽だけでは、単なる効果音だけに見えてしまい、遡っての印象効果は薄くなりがちでもあります。

その他にも「前半飛ばしの、後半バタバタ」のパターンは健在(?)で、「最後の悲劇」の場に、なぜ印鑑・通帳があったのか、時間的経過が不明なため、松木がなぜ真犯人に感情向き出しで怒るのか(註・松木・戸川がノーマークであったことへの疑問)が、イマイチ理解しづらいもの目につくところでした。

 

当作は、令嬢2人のそれぞれの家庭、令嬢とスケ番、現職記者とトップ屋、という「対比」を上手く説定して、場合によっては面白く展開する要素があったのですが、上記に挙げた構成・演出などの点から、中途半端に終わったことは否定できません。キャスティングも、特捜隊の世界ではそこそこ有名どころを揃えたりと、意気込みは感じられるものの、どうも脚本・佐々木武観、監督・伊賀山正光の組合せは奏功しているとは言い難い。

悪く言えば題材を盛り過ぎたゆえに、消化不良に陥ったともいえそうです。

 

その反面、注目されるのは、安西を演じた仙波和之の役どころ。当作では、悪人か、善人か、最後までわからないという構成で、上記の挙げた点が多少なりとも是正できていれば、もっと重きを置けたキャスティングだと思いました。とにかく、仙波和之という俳優さんは【第3回再放送】から登場していますが、ストーリー途中で殺されたり、途中から出てこなくなったりとか、扱いは脇役クラスなのが多いのです。ところが、当作では善悪判断しづらく、出演場面も今まで以上に多い。これはリアルタイムなら、あと3か月で特捜隊番組終了がわかってているだけに、構成上なんとかならなかったかとも。。。(後世的な見方と、わかってはいるのですが)

その仙波和之は、まだ俳優活動を続けているようすです(1933年1月11日生まれ、当作時点で46歳、現在87歳)。ご健在であれば、東映chで特捜隊特集が組まれたとき、常連俳優さんとして出演してもらいたい存在でもあります。