※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#770  歪んだ女心

 

 

 

(本放送)・・・1976年8月25日

(再放送)・・・2020年4月30日

(脚本)・・・渡辺由自

(監督)・・・島崎喜美男

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷隆)、

谷山部長刑事(和崎俊哉)、桂刑事(佐竹一男)、神谷刑事(山口あきら)、

入江刑事(池田駿介)、田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

津田亜矢子、中真千子、宗近晴見、此島愛子、青井陽治、一の瀬玲奈、宇南山宏、

戸沢祐介、大堀早苗、平凡太郎、藤原釜足

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・(特捜隊本部で、凶器のナイフを刑事たちに見せつける老人の場面)

老人 「わしが・・・殺したんだ! 本当に殺ったんだ! 

    年寄りを馬鹿にしやがって!

    だから、ブスッと一突き・・・」

・・・(ナレーションに戻る)

この身寄りの無い老人は、留置場の生活を楽しんでいるようだったが、

突然息子が現われ・・・

・・・(息子が妻と子供を連れ、老人に面会する場面)

息子 「ほら・・・、お爺ちゃんの孫ですよ」

・・・(突然、老人が立ち上がり、押さえつける警察関係者たちの場面)

老人 「わしじゃない! わしがやったんじゃない! ここから出してくれ!

      この女は男に騙されたので、カッとなって、つい殺してしまった。

    わしが同情して、身代わりになってやったんだ・・・! 

    わしじゃない、子供や孫と一緒に暮らしたい、出してくれ!」

・・・(以下、ナレーション)

捜査線上に浮かぶ女性を次々とあたったが、いずれも犯行に結びつかず、

この老人の叫びは、虚しく消えていった・・・。

次回、特捜隊、「歪んだ女心」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・一の瀬玲奈が演じる戸川刑事はエンディングに表記される。なお苗字の下の名は、劇中のある人物の台詞で「れな」ということがわかる(漢字表記は不明)。

・戸川は三船班からの客分的な出演なので、「矢崎班」単独の捜査と見做す。

・鑑識員は西郷昭二に再改名したはずなのに、オープニング表記では再々度「隆」になり、当作での出演場面も見当らない。

 

 

(視聴録)・・・開始約11分前半まで

 

渋谷の街では、様々な風景が目に入る。

三船班・戸川は、旧友の小倉真由美(津田亜矢子)が金融会社社長・神山(戸沢祐介)に見送られ歩いているところを、駅近くデパート前で出会う。真由美は2年前に夫(未詳)を亡くし、息子・弘(南部健太郎)と2人暮らしと聞いていたが、日々の生活に苦労しているようだった。

 

また同じころ、谷山・桂は、店員(渡辺啓二?)の万引犯追跡現場を目撃する。その万引犯は老人で武田(藤原釜足)といい、谷山・桂と同時に伊東巡査(平凡太郎)も駆けつける。伊東は武田と顔見知りなのか、代金を立替て事無きを得ようとしたが、武田は面白くない素振りを見せ立ち去る。伊東は首をかしげる谷山・桂に、三食飯付きの留置場に入ろうとした武田の行動と説明するが、身寄りが無いらしく本心は寂しいのも理由だろうと話す。このことがあったからか、武田は谷山・桂が特捜隊本部にいるところを訪ね、食事をねだるようにもなる。。。

 

それから数日後、高架下に男性の死体を発見した戸川は事件を通報、駆けつけた矢崎班に第1発見者として状況を説明する。鑑識からは、ナイフ状のもので心臓を一突きされたのが致命傷だが凶器は見当たらないと報告される。死体の状況は、靴を履いていないこと、現金を盗られた形跡は無いこと、車道・歩道から高架下に引きずり込んだ形跡があることが判明、所有の名刺から浮谷建設営業部長・浮谷敏夫(宇南山宏)と身元も確定できた。

 

浮谷の遺体との対面に、妻(此島愛子)は号泣するが、聞きこみをしていくうちにいろいろと判明する。浮谷は仕事は出来るうえに部下の面倒見が良く、それを見込まれ一族会社である浮谷家に婿養子に入り、妻と社長でもある義母(未詳)との3人で渋谷で暮らしていた。さらに、部下社員(藤竹修、塚田末人)からは、釣りが妻から解放されるひとときという証言も得る。

 

矢崎班には第1発見者の戸川の協力も加わるが、捜査ははかどらず、目ぼしい容疑者も見当らなかった。そんな中、またもや特捜隊本部に武田が現われる。しかし、捜査の真っ只中ということもあり谷山・桂は相手にできない。すると、武田はポケットから血まみれのナイフを取り出し、浮谷殺しは自分だと話し出すのだった・・・。

 

 

武田の供述は、昨夜歩いていて浮谷とぶつかったが、謝りもせず暴言を吐いたので、ガード下で拾ったナイフで刺してしまったというものでした。ナイフ鑑識結果は、血痕は浮谷と同じAB型、武田の指紋のみがはっきりと検出され、犯行を裏づけます。しかし、谷山は老人の犯行とは思えず、武田をよく知る伊東巡査を呼び出しても、泥棒はしても殺人までする度胸は無いと答えます。そこに係官(佐川二郎)から、武田あてに息子(宗近晴見)、息子の妻(中真千子)、孫・初(ハジメ、斉藤弘)が面会との知らせに、武田に身寄りは無いものだと思い込んでいた面々は驚きます。武田は息子夫婦と床屋を営んでいたところ、どうやら息子が発した「老人ホーム」という言葉に過敏反応して、家を飛び出したらしいことがわかります。

 

そして、勘違いだとわかってからは前言を翻し、昨夜、女が男を刺した現場に出くわしたと話し出します。女は妊娠したから約束通り男に結婚を求めたところ、男は妻と離婚できないと繰り返すばかり、カッとして女は男を刺したといういきさつでした。そこで、武田は女に同情、身代わり出頭したのですが、女には以前世話になったことがあると言いながらも、女の素性についてはわからないということでは武田の立場は悪くなるばかり。。。というのが、予告篇にあるストーリーの流れになります。

 

実は、開始約5分後半あたりに、浮谷が愛人のバーホステス・吉崎美代子(大堀早苗)とホテルで過ごす場面、戸川が真由美を訪ねると神山の取立てばかりか弘にも先立たれていた場面が挿入されています。さらに浮谷の妻にも、パトロンになっている若い画家・坂上信夫(青井陽治)がいることを、クラブの若者(伏木和章)から聞きこんだり、美代子の勤めるバーのバーテン(原大作)、ホステス(宇野壬麻)から客(山田光一)とのトラブルの件、浮谷建設の女事務員・さとう(六角なお)から、事件当日に浮谷から頼まれ現金30万を引出、数えて手渡した件も判明。果たして、武田の言う女とは誰なのか、これが後半のストーリーの核になります。

 

 

当作の予告篇を見る限りでは、武田を演じる藤原釜足のオーバーアクトが目立ち、正直食指が伸びない作品だなという先入観がありました。藤原釜足という俳優さんは、経歴を見るとオペラ、お笑い系を主にしているようですが(晩年は黒澤明監督作品の常連と変化)、自分は#496 闇の中#515 私は許せない、のような寡黙なスタイルの方が味を出していると捉えているので、実際、当作のオーバーアクトがプラスかというと、むしろマイナスだったと感じます。

このことに触れたのは、当作の構成自体は悪くないと感じたからであります。題名の「歪んだ女心」がそのまま内容を指し示しているかは別として、ストーリーに女が絡んでいるというのは直感できるので、さて「謎の女」は誰か? その背景に何があったのか? と視聴者の興味を惹きつける狙いは、サスペンスものとしては常道で適切でありましょう。さらに、#764 駄目な奴のラストでの「三船班のある布石」による、三船班・戸川の登場なども興味深い(註・これは、当作直後作品特別機動捜査隊(第771回)新宿海峡 の予告篇に、水木刑事が登場することとも関連します)。

 

その狙いが藤原釜足の好演(?)で見えにくくなり、老人・武田のほうに目が行く結果となったように見受けられます。また、「謎の女」を開始約29分前半で明らかにしてしまったのも残念なところです。回想なのだから徹頭徹尾、後ろ姿なりの描写で正体を明かさず、その回想した場所でも「ある人物」から「謎の女」の名前を出すのを控え(せめて容姿だけにとどめ)、開始約34分前後の武田の「面通し」でクライマックスにする方法もありました。

 

プレイガールでの島崎喜美男監督は、回想場面を多用する技巧が目立ちましたが、これらは複数の女主人公のアクションものだから効果的であり、特捜隊のように男臭く犯罪を追及するスタイルでは、すべてを明らかにする回想は避けた方が良かったように思えます。ちなみに、真由美を演じた津田亜矢子はプレイガールの常連女優さんであり、美代子を演じた大堀早苗もプレイガールでレギュラー出演していました。

あと、犯人追及・特定の決め手もラスト近くに示されますが(註・フィルム劣化で音声が悪いのか、聞きとりにくいのが難点)、これとて「その人物の行為の回想場面」があれば効果的で、上記本文で若干触れていますが、台詞一言で終わらせたのは惜しい気持ちもあります。

 

なお、「掲示板特捜隊 9」で少し書きこまれていますが、矢崎班の当作以降の担当回は、検証本によると再登場は特別機動捜査隊(第798回)大都会の魔手 、そして特捜隊の終焉ともいえる特別機動捜査隊(最終回(第801回))浮気の報酬 、わずか2作品にとどまります。

当作の本放送1976年8月25日の時点で、特捜隊終了を考えるのは不自然で、「掲示板特捜隊 9」での書きこみのように、「矢崎班を表に出せない理由」があったと考えるのが自然でしょう。しかし、それを裏づけるソースを発見できなかったため、ここでは指摘のみにとどめます。個人的には、三船班・日高班・矢崎班の3班体制だと番組を回せないから、単に視聴率の悪い捜査班(これこそ情報ソースはありませんが)に「お引き取り」を願ったもので、特捜隊終了近くに、その功労として2作品担当になったような気もします。