※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#730  南国の 旅路の果て

 

 

 

(本放送)・・・1975年11月5日

(再放送)・・・2019年12月12日

(脚本)・・・西沢治

(監督)・・・鈴木敏郎

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

石橋雅史、藤田淑子、沢田勝美、川代家継、作本都、横川まゆみ、光沢正子、

京千春、尾崎清光、増田順司、高品格

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

2年間に2度も結婚し、

2度とも新婚旅行先で新妻が行方不明になった男が、

また結婚し、新婚旅行は前と同じ高知県へ出かけていった。

そして男は、妻が替わるごとに、

その財産を自分のものにして、大きくなっていくのであった。

2人の妻の蒸発に、不審をいだいていた三船主任は、

関根部長刑事らを追跡させた。

2人の後を追っていた関根部長刑事は、高知市内で

今は警察を退職し、四国巡礼の旅に出ている先輩に出会うのであった。

この老人は退職する前に、やはり蒸発妻の事件を追っていて、

その行き過ぎた捜査に事件から降ろされていたのであった。

そして老人は、男の姿を見て、

その眼は異常なまでの光を帯びるのであった・・・。

次回、特捜隊、「南国の 旅路の果て」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・高知ロケをした模様だが、協賛に地元企業等の表記は無い。

・「掲示板特捜隊 9」では、#730 南国の 旅路の果て 、と、#734 絶望を越えて の2作は、高知ロケ2本撮りとの指摘有り。

・「おんだ一平」を検証本引用により、「恩田一平」と以下本文で表記する。

 

 

(視聴録)

・・・開始約15分前半まで

 

四国巡礼に出ている元刑事・恩田一平(高品格)は、竹林寺参拝の折、かつての部下であり特捜隊の部長刑事の関根に出くわす。関根は、事件で税理士・阿久津じろう(石橋雅史)を追って四国まで来たのだが、恩田は阿久津の名に異常な反応を示す。

かつて恩田は、阿久津が結婚するたびに起こる異常な案件を追いかけていた。阿久津の妻は金があり、新婚旅行はいつも高知、その場所で妻は行方不明、そして阿久津は妻の貯金を自分のものにしていたのである、

1人目の妻は花園町の飲み屋の女将(横川まゆみ?)、2人目の妻は歌舞伎町のバーのマダム(光沢正子?)であり、恩田は強引に阿久津を所轄署に連行するほど、この案件に入れ込んでいた。しかし、署長(増田順司)から特捜隊の担当ということで阿久津を釈放せざるを得ず、旧知の関根を呼び出し管を巻いていた。関根の手一杯な所轄署を手助けするという釈明に、恩田はとりあえずは特捜隊のお手並み拝見と矛を収めるものの、そのうち定年退職になってしまい、阿久津の件には心残りがあった。

 

そして今回、阿久津は、渋谷のスナックのマダム・みやた雅代(藤田淑子)を3番目の妻として高知へ新婚旅行。これを三船班全員で追跡捜査をしていた経緯があった。

竹林寺の後、三船班はホテルに戻った阿久津夫妻を追い、ホテルに同宿するが、そこでは石原が強引にでも連行すべきとの強硬論を述べていた。しかし、三船主任は裏づけとなる証拠は無く事件としては不成立、状況証拠ではなく決め手となる物証を求める。これは過去に阿久津を参考人として、三船主任・松木・石原で問い詰めたものの、阿久津に死体が出てこないのに犯人扱いするのはおかしいと、のらりくらり交わされたこともあったからで、石原の主張は却下せざるを得なかった。

 

実際、「阿久津が2人の女を殺害したのかもしれない」「今度も殺害する気かもしれない」ということだけではどうしようもなかった。そこで三船班としては、阿久津が雅代を襲う現場を押える以外になく、さらに雅代の命も守らなくてはならないと方針を固めたところで、関根あてに呼び出し電話がかかってくる・・・。

 

 

その後、関根を呼び出したのは恩田だとわかりますが、そこで恩田は「ある決心」を打ち明けます。恩田の過去に逮捕した犯人たちは、凶悪犯・死刑囚であろうと根っからの悪人はいないとの思いがあったわけですが、阿久津は根っからの悪人であり、自分の手で逮捕できなかったばかりか、後を託した特捜隊も逮捕できずにいる現状を嘆きます。そして、四国巡礼に来たのは、逮捕した犯人が死刑台に送られたことを供養する目的もあるのですが、自分の手で阿久津を捕まえることが彼らを弔うことにもなると、真情を吐露します。捜査権も無い定年退職の元刑事の立場を考え、関根は引き止めますが、恩田は「俺には俺のやり方がある」と去っていきます。

阿久津を巡り、これから三船班、恩田の2方面からの追及となる予感を漂わせながら、ストーリーの折り返しとなり、後半への興味を繋げることになります。

 

 

当作の構成は、「結婚詐欺+殺人」の構図に、三船班と定年退職刑事とが各々追及に当たるという単純なもので、非常にわかりやすい。特捜隊でたまに見かける、ゴチャゴチャした説明・展開は無くのんびりと観れる作品です。特に、ロケでは内容を詰め込みすぎて「ストーリー分散破綻型」になることがあるのですが、当作では程良い程度に高知県の描写がされており、辻褄が合わないところは目立ちません。

それでは当作が優れた一品かというと、「単純な構図」なら上手く膨らませる構成をとりやすいと思うのですが、単純な構図のままエンディングまで進むのは感心できません。

 

具体的にいうと、ある出来事についての説明が、三船班・恩田・阿久津から、同じ内容で、別々の場面で発せられることが目立つのです。繰り返されすぎると「またか」のイメージが植えつけられてしまい、わざとストーリーを進展させないのかと思うほどです。

そして、ポイントでもある「恩田の決心」が、実行されるまで恩田側からの主観的描写が無いことは消化不良の感があります。これは、最終的な阿久津の結末が、視聴者に納得できるものであるかということにも繋がっていきます。あれだけ用意周到で、三船班の訊問を軽々とかわす術を持つ阿久津が、ラスト10分弱であそこまで変容する理由づけの描写が乏しいともいえ、「終わり良ければ総て良し」とならないところが、残念な出来に見えるのです。

 

当作の狙いは、脚本・監督は違えど、秀作#515 私は許せない を意識した、関根がかつての上司(恩田)に向ける思いだったと推察します。いわゆる、関根部長刑事活躍譚としての高知ロケであり、近作でのロケ作品は、「松木部長刑事」「石原刑事」をストーリーの軸に置いてあることからもわかります。しかし、当作では関根からの描写が軽く見えてしまい、その意味ではラストでの盛り上がりに欠け、「分散」した印象を受けてしまうのが惜しい点です。

 

あくまで個人的な推測になるのですが、当作の仕上がりは、高知ロケにも関わらず、協力・協賛が一切表記無しというのがポイントになりそうです。「掲示板特捜隊 9」で軽く触れられているところから考察すると、大きな外圧がかかり、内容変更・時間制限・プレッシャーが起こり、本来撮ろうとしたものとは別なものが出来上がったのではないか? とも考えられます。

不自然ではない程度に「ある人物」が登場するのはいいのですが、「掲示板特捜隊 9」の指摘どおりwikiで検索してみますと、なかなか驚きます。かつての特捜隊スタッフは、リアル広島戦争の最中でも、#481 追憶の街 で呉へと撮影に出向いた猛者揃いでしたが、そのスタッフ陣にも影響を与える存在であったのか・・・興味はつきないところではあります。

 

高品格は、#677 十円玉の謎 では高利貸、#717 わたしが殺した男 では警視庁・刑事部長、#726 兄とその妹 では劇場主を、当作では引退した元刑事を演じています。東映chで再放送された「ロボット刑事」、渡哲也主演「大都会」での刑事役が印象に残っていたせいか、当作の刑事役は板についています。ですので、前述の「実行されるまで恩田側からの主観的描写が無い」というのは、たぶんに自分自身の個人的な感情も入っているのかもしれません。

消化不良の当作ではありましたが、数作後の#734 絶望を越えて では果たしてどういう作品、役割になっているのか、12月26日(木)の再放送を待ちたいと思います。