※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#706  魅せられた賭け

 

 

 

(本放送)・・・1975年5月21日

(再放送)・・・2019年9月19日

(脚本)・・・元持栄美

(監督)・・・鈴木敏郎

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、田坂刑事(倉石功)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

富山真沙子、剣持伴紀、笹原光子、川部修詩、堺左千夫、柳生博、六本木真、

仲谷昇

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

激しい競争を繰り広げる、新製品の研究開発。

その影で暗躍する、産業スパイの一味たち。

彼らの巧みな誘い込みに屈して、その手先となった男が、

会社の機密書類を持ち出した!

そして、起こった殺し合い・・・。

その書類の奪い合いの中で、翻弄され、

ズタズタに引き裂かれていく当事者たち。

行き詰まった生活からの脱皮を図りながら、

ついには、破滅への道をたどる。

何人もの飽くなき欲望が複雑に絡み合い、

事件の波紋は、さらに拡大していく!

次回、特捜隊、「魅せられた賭け」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・脳溢血となったのに、なぜ入院しないのかと首を捻る場面がありますが、自身の知人の話によると、昭和のころは「頭の病気については動かさない」という風潮があったようです。

・実際には、五郎の身元は、関根からの無線連絡(梶浦の団地から出てきた三船主任の場面)で判明するのですが、以下本文では端折って作成しています。

・再見時視聴=#706 魅せられた賭け【スペシャルセレクション】

 

 

 

(視聴録)

・・・開始約13分前半まで

 

ある夜、北東電子工学研究所では、研究員・梶浦しゅういち(剣持伴紀)が金庫を開けようとしていた。2人の男から、開発中の超小型コンピューター設計図を提供するよう持ちかけられ、代わりに現金2千万と女・美也子(笹原光子)の身体を提供するという条件であった。目的を果たした梶浦だが、その帰路、バイクに乗ったよこでら五郎(瀬戸山功)にカバンを奪われる。

 

しかし翌朝、川の水門で五郎の溺死体が発見され、三船班が現場捜査。腹部に内出血の痕があり、死亡推定時刻は昨晩9時、川底から、遺留品のバイク、カバンが発見された。そして、カバンに梶浦の名刺があることから、三船主任・松木・石原は梶浦の住む団地へと向かう。

 

団地前では、梶浦の妻・咲子(富山真沙子)が、往診の医師(松下昌司)・看護婦(未詳)を送り出すのを、サングラス男(註・後に竹山という男とわかる、演じるのは堺左千夫)が車中から監視していたが、特捜隊車両が到着したことから、その場所から退散する。

 

三船主任・松木は咲子に状況報告をするが、梶浦は昨晩9時ごろ帰宅すると、いきなり倒れ昏睡状態に陥ったことがわかる。咲子の話では、病名は脳溢血であり、1年前から投薬をしていたこと、意識を取り戻しても話せるようになるかは不明、現在は自宅内で寝たきり状態となっていることであった。聞きこみを終えた三船主任・松木は、外に出ると待機中の石原と意見交換、そのとき関根から無線連絡が入り、五郎のアパートへと向かう。五郎のアパートでは三船班総出で室内捜索、大量のマッチ箱から昨晩の五郎の足どりを追うことを指示する。

 

一方、松木・田坂は北東電子工学研究所を訪れ、研究室部長(川部修詩)、梶浦の同期の研究員・小森たかし(六本木真)に聞きこみ。松木は、金庫が研究室メンバーと所長しか開けられないことから、設計図が中に有るかか調べたい旨を申し出る。小森は梶浦を疑っているのかと憤慨するが、研究室部長は警察の職務ということもあり、金庫を開けることに同意する。開けてみると、設計図は筒の中にあり、小森に謝罪する松木・田坂だったが、そこに三船主任が現われ「設計図があるだけでは不充分で、カメラでの盗み撮りの可能性」から、再確認をする。すると、設計図の四隅にクリップか何かで止めた跡を見出し、急遽、特捜隊の鑑識課写真係にて精密検査をすることになる。三船主任・関根・松木・研究室部長の見守る中、係員(木村修)が赤外線撮影などでの検査の結果、クリップ跡が完全確定、あってはならぬ事態に研究室部長はため息をつくのだった。

 

特捜隊本部では、梶浦が設計図を盗まずマイクロフィルム(以下、MFと略)に写したこと、五郎はカバンの中に設計図があると思い強奪したこと、これらの線が強いと判断。梶浦がMFで渡そうとしたなら、まだ手元にあるだろうから、関根は梶浦宅の捜索を進言する。しかし、三船主任は、おそらく現在では咲子がMFを持っているだろうから、(五郎を殺害した)犯人は咲子に接近すると踏んで、梶浦宅の張り込みを徹底させる指示を出すのだった・・・。

 

 

ストーリーは、その後、小森が梶浦宅を訪ね、咲子と近くの公園を歩くことになります。そして梶浦も含め3人は同じ大学出身で、小森は咲子に求婚するつもりだったこと、咲子も結婚して5年、子供もおらず、もし小森と結婚していたらと、本心なのかどうか互いに語り合います。張り込んでいた田坂は関根に、上記のことから、小森は事前に梶浦の企みを知っており、梶浦の失脚(会社内ではライバルであったこと・咲子との問題)を狙い、五郎を使ってカバン強奪を実行、口封じで五郎を殺害したのではと、推理を語ります。

 

三船主任・石原は、マッチ箱の線から、「珈琲・スィング」のウエイトレス(村松美枝子)に聞きこみ。昨晩6時半ごろ、五郎は2人の男と話しており、1人はサングラス男(註・梶浦の団地前で監視していた男)で、もう1人は背中を向けていたのでよくわからなかったという証言を得ます。そして、3人が帰った後に置き忘れられたライターを、証拠品として預かります。

 

三船主任は何を思ったか、このライターを持って東陽電気工業を訪れ、開発部部長・前島洋介(仲谷昇)と面会します。実は、三船主任と前島とは同級生であり、4年前の同窓会で前島からもらった試作品の電子ライターが、証拠品ライターと同一のものだったのです。そこで、三船主任は4年前に作った試作品を誰に渡したか、リストアップ依頼で来たのですが、前島はこの試作品の内容が北東電子工学に漏れたため、先を越されたと悔しい思いをしていたのでした。電子関係の商品開発は各社シノギを削る戦いで、前島も、部下の堀田(柳生博)を大学から引き抜いてコンピューター開発に当たらせていたものの、成果は上がらず、前島・堀田ともども苦悩する状況が描き出されて、ストーリーは後半へと繋がっていきます。

 

 

当作は、研究開発において、いかに他社に先んじて新製品を開発するか、その第一線にいる研究員は邪心を打ち払い研究に専念できるのか、あるいは研究員の周辺にいる人たちはどのような影響を受けるのか、これらを描くことをねらいとしています。

謹厳実直の小森、いい加減な志の梶浦、この間に挟まれる大学からの2人を知る梶浦の妻・咲子、この3人の構図に北東・東洋の両会社の関連人物を介入させることにより、ドラマを面白く展開させようというのが具体的な例として挙げることができます。

 

しかしながら、観終わって考えると、「先走り」が強い仕上がりという印象を受けます。ある事象が提示されるのですが、視聴者がそれについて考えるのとは「次元が異なる」飛躍・展開になり、ストーリーはその前提のもと進んでいくというものです。

たとえば、上記本文で、梶浦の部屋を出た三船主任・松木と石原との意見交換で、

・松木が、カバンから盗まれたものがあったのか確認しようがない、と言いながらも、北東電子工学研究所に田坂と訪れ、いきなり超小型電子コンピューターの件となるところ

・石原が、梶浦のカバンが遺留品として発見されただけで、カバン強奪事件があったものとして、その目的が計画的なものか? 行きずりの犯行か? を考えるところ

などが挙げられます。

そして、三船班の主目的は五郎殺害事件のはずなのに、いつの間にか、超小型電子コンピューター設計図に重点が置かれ、(カバン強奪事件があったとしても)なぜ五郎が殺害されたのか、田坂の推理だけしか表に出ず、ようやくラスト10分になって出て来るという形態です。

もっと突っ込めば、三船主任が確証も無く、咲子をマークする意図も飛躍しすぎであり、この点も「先走り」であるといえましょう。

 

個人的に、特捜隊での好みの女優、富山真沙子が出ていたせいもあり、ボーっとラストまで観てしまったのですが、何かしっくりとしない感がありました。考えてみると、前述した「先走り」的な展開が見受けられ、2人の男の狭間にいながらも、理由があるとはいえ、誰にも相談せず現金への執着を見せるというところは?がつきます。ボーヌのマッチ箱・ハンカチを見つけてしまった今となっては、現金への執着をみせる理由は消し飛んでしまうような気がします。これらの「先走り」が目立つところから、刑事ドラマとしては、残念ながら面白味を欠いていると言わざるを得ません。

 

なお余談ですが、当作放送時は、すでに高額療養費制度が始まっており(1973年から)、現在より負担額が少ない当時では、給与減額されても、ある程度対応可能だったのではとも思います。もちろんこれは、後世からの感想ではあるのですが・・・。

 

これらのことから、近作では好調さを見せていた特捜隊作品に、久しぶりにブレーキがかかったという感もします。上記の理由だけでなく、三船班に田坂刑事というのが収まりが悪いこともあります。畑野刑事は、演じる宗方勝巳のスケジュールで出て来ないと考えられますが、やはり三船班といえば畑野というイメージが強いのです。

次作以降は捲土重来なるか? 何とか、好調さを取り戻してもらいたいですね。

 

あと、先ほど触れた富山真沙子ですが、本当に不幸が絵になる女優さんです。特捜最前線でも、本阿弥周子という女優さんが、同じようなイメージで出演されていましたが、富山真沙子の存在感はそれ以上です。調べてみると、「初期大河ドラマその記憶」というブログで、「樅ノ木は残った」(2017年9月18日更新)という記事で触れているのが、おそらく唯一の記事です。

悪女を演じても薄幸さが滲み出ている感が強く、それゆえ「特別機動捜査隊」というドラマのカラーに上手く当てはまったのでしょう。当作以降も、特捜隊出演は続き、特捜隊番組終了後も女優活動を継続していましたが、1983年の活動以降は姿を見せておりません。