※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#651  姿なき脅迫者

 

 

(本放送)・・・1974年4月24日

(再放送)・・・2019年3月14日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・伊賀山正光

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、石原刑事(吉田豊明)、

松木部長刑事(早川雄三)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

出門英、小野恵子、椎谷建治、吉田守、会津はるこ、森永双、市川ひろし、

安田明純、伊藤慶子、小甲登枝恵、河野洋子、小野富士子、宇野静代、土屋靖雄、

牧田正嗣、加藤真知子、湊俊一、松風はる美、三田桃基子

 

 

(あらすじ・予告篇のナレーション)

・・・ #650 二億円の謎 の【第3回再放送】では予告篇が無かったが、再々放送では付加されていたので、それを以下に記す

 

・・・・(誘拐犯人からの連絡を待つ、関係者と三船班の面々の場面)

電話のベルが鳴り、電話に出る男、水木、松木が逆探知、声を聞き取る三船主任

電話に出た男     「安西です・・・、もしもし、もしもし」

誘拐犯人の男の声   「あんた、警察に話したね!? 

            妹さんの命は諦めてもらうぜ!」

電話に出た男    「待て、待ってくれ! 警察には何も知らせていない!

            嘘じゃない、信じてくれ!!」

・・・・(以下、ナレーション)

巧みな計算と行動で、次々と捜査陣の裏をかいていく誘拐犯人・・・。

その容疑者に、若い牛乳屋夫婦が浮かび上がった。

そして、再び鳴り響く、脅迫の電話。

さて、その結末は・・・!?

次回、特別機動捜査隊、「姿なき脅迫者」に、どうぞ御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・駅前の公衆電話BOXは京王線・つつじヶ丘駅周辺、その後、三船主任が安西に追いついたのは京王線・調布駅である。なお、現在の調布駅は、その周辺の線路とともに地下に移行して、当作の面影は見られなくなっている。

・クライマックスの真相追及は、都電荒川線沿いの大鳥神社(鬼子母神前駅の周辺)。川野印刷所とされる場所は、現在、コンビニに風景を変えている。なお上記の京王線沿いと路線が違うのは、本篇で具体的地名が述べられていない、ご愛敬か?

・志津を演じた小野恵子は、後年時代劇などで活躍する女優と同一人物で、#572 二十七年目の女 に出演した同名女優とは異なる(個人的主観)。

・これまで(視聴録)では、関根部長刑事、松木部長刑事、などは「部長刑事」の名称をつけて記していたが、当作以降の(視聴録)は、捜査班を「主任」「係長」のみの名称で、あとは氏名で記すこととする。

 

 

(視聴録)

・・・開始約22分半ばまで

 

若夫婦の慎一(出門英)、志津(小野恵子)が、慎ましくも営む粕谷牛乳店を通り過ぎる三船班の特捜隊車両。車両内には、誘拐事件発生の報に、クラブ・シェルマンに向かう三船主任、関根、石原の姿があった。犯人に悟られないために、三船主任のみが店内に入り、到着済の松木、水木と合流、マダム・いながわ(三田桃基子)、マスター・安西(椎谷建治)から聴取。

 

誘拐されたのは、安西の亡き妻の妹・すどう麻美(マミ、宇野静代)。昼は店を手伝い、夜は洋裁学校に通っているのだが、昨夜11時を過ぎても帰らなかった。そして、店でやきもきするいながわ、安西に男の声で電話があり、麻美を誘拐したからと一千万の身代金を要求されたという。

 

とそこに、犯人から再度電話があり、警察が介入しているかどうか観測気球らしき内容で、すぐに切られてしまうが、水木は逆探知に成功。三船主任は待機中の関根、石原に逆探知先の団地電話BOXへ向かうよう命じる。しかし、そこには犯人らしき姿は無く、業務車両で配達中の慎一に聞いても、人影には気づかないようであった。

店では犯人の声を録音したテープを全員で再聴、いながわからは、その声が常連客のチンピラ・たかはし実(ミノル、森永双)に似ていること、安西からも、実が麻美にちょっかいをかけていたと証言、三船主任は有力な容疑者を見出す。

 

それでも身代金は必要なため、いながわが工面することになり、大学生の息子・一夫(吉田守)に預金通帳を持参してもらう。紙幣の指定もあり、速やかに揃えてもらうため、いながわ、一夫のほか、三船主任も同行して銀行に行くことになるが、その前に三船主任は所轄の城南署に立ち寄り善後策を練る。そして、署長(湊俊一?)に人員応援協力を要請。婦人警官の杉田ひろこ(会津はるこ)は関根と洋裁学校へ聞きこみ、同じく婦人警官の川崎きょうこ(加藤真知子)は石原と実を当たり、三船主任は予定通り銀行に向かう。

 

その後、三船主任はいながわ、一夫と銀行から出ると、売上入金でやって来た志津と出会う。志津は、店でこの春まで働いていたこともあり、いながわとも顔見知りだった。三船主任は団地電話BOXのこともあり、粕谷牛乳店に寄ってから店に帰ることにする。すると、この事件に興味のある一夫は、自分でも調べると言い出すが、三船主任、いながわもそれをたしなめ、学業に専念するよう大学に向かわせる。

 

粕谷牛乳店では、慎一は留守番を隣の小母さん(松風はる美)に任せパチンコ店に出かけたため、三船主任、いながわの来訪は空振りであった。そのパチンコ店では、石原、川崎が実を捕まえる成果を挙げるが、それを慎一は興味深く眺めていた。

 

しかし、店で待機中の三船主任に石原からの連絡は、実にアリバイが成立したという内容、がっかりしているところに、犯人から3度目の連絡が入る。どうも犯人は、三船主任、いながわ、一夫の銀行での動きを見ていたようで、安西に午後2時に店を出て駅前ストアで赤いバッグを買い、その中に身代金を詰めて、ストア外の赤電話の脇で待つよう指示を出す。水木からは、今回の逆探知は回線が混みあっていたこともあり、失敗の報告を受ける。

 

三船主任は安西に同行、関根、松木、石原、川崎、杉田も周囲を監視していると、赤電話に犯人から連絡があり、駅前の公衆電話BOXの前で待つよう指示を受けそれに従う。すると今度は公衆電話が鳴り、BOXに安西、三船主任が入り受話器を取ると、犯人はこの状況を監視しているようで、三船主任の正体を見破り、警察の退去も要求、それがなされたらまた電話をすると言い放つ。やむなく、三船主任は川崎、杉田を遠巻きに残し、特捜隊本隊を退去させるが、安西には隠しマイク無線機を渡し、逐次犯人からの要求を連絡するよう託す。

 

そして、特捜隊車両が駅前から去っていくと、それを駅前ストア屋上から見つめている慎一の姿があった・・・。

 

 

上記は開始約22分半ばまでの流れで、その後、麻美を取り戻したいという安西が、走る電車からバッグを外に投げ出します。それを踏切待ちの慎一が拾い、中身を除いたところを三船班が確保。果たして、犯人は慎一(あるいは志津も加えた2人)なのか? 麻美の行方は? そして、慎一が思わず口走った旧友・いしだ(土屋靖雄)とは? など興味津々に展開します。

 

 

ストーリーの流れは非常にスムーズであり、逆探知の成功・失敗が有りながらも、誘拐犯人の狡猾さが上手く浮かび上がるよう描かれています。なぜ、三船班の行動が犯人に読まれているのか、それらしき人物の意味深な行動も、上手くポイントを押さえています。

そして、逆探知に失敗したときの録音テープの再聴したときのカタカタ音の正体が、ラスト大団円に至る直前に映像で表現されるのも効果が出ています。(備考)に書いた「ご愛敬」があるものの、三船主任の「真犯人(ホンボシ)の見当をつけた」という台詞にも繋がり、それなりに構成をつけた作品だと見受けられます。

伊賀山正光監督の特徴は、好不調落差の大きい作品づくりになりがちですが、当作は好調な部類に入ると思われます。

 

が、それでも

・特捜隊本隊が退去したあと、誘拐犯の指示が描写されないところ(開始約22分後半以降)

・なぜ誘拐事件に至ったのか、動機づけが脆弱なところ(開始約41分後半以降)

が気になります。勢いよくラストまで流れるのですが、そこで動機が解明されるにつけ、上記の2点が浮かび上がるので、「なるほど!」とならず「なぜ?」と首をかしげる結果になります。特に2番目の点は、そもそも大々的に誘拐事件をやる必然性があったのか、金に関しては目に見えないところでやるのが普通では、と思えるほど。

そして、事件を「ある人物」になすりつけようとする点が、理由を直接描かず、「別の人物」の証言で間接的に描くという、細かい仕事がなされながら、上記2点の処理が不十分なため目立たないことになったのは残念なところ。これらの点もあり、勢いを加味しても、なんとか佳作に至るレベルではないかというのが、自分の見立てではあります。

 

とはいうものの、約2年ぶりの特捜隊の新作品視聴。多分に集中しての観賞のため、どうしても粗が目立つものなのですが、それでもラスト直前まで良い気分で見ることが出来たこと、短所が上記のみにとどまったというのは、興味深い。それだけ、自分自身が、昭和ならでは、東映ならではの作品(刑事ドラマ)づくりに飢えていたということなのでしょうか。

ゆえに再放送再開の第1作としては、出遅れ無くの無難な発走といったところ。次回以降が楽しみになりました。