※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#572  二十七年目の女】

 

(本放送)1972年10月18日

(再放送)2016年5月26日

(脚本)村田武雄

(監督)中村経美

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識員(田川恒夫)、

鑑識員(西郷昭二)、関根部長刑事(伊沢一郎)、白石刑事(白石鈴雄)、

浜田刑事(矢吹渡)、石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

久慈あさみ、石坂ひろし、小野恵子、片山滉、緑八千代、福井淑恵、鮎川浩、

中庸介、如月寛多、佐伯徹、小林裕子、牧紀子、阿部寿美子

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

文芸協会作家と自称し、

次々と女性を毒牙にかけるペテン師・若松喜一郎が、

何者かに殺害された。

果たして、怨恨か!? 物取りか!?

捜査中、主任・三船が過労で入院、捜査は行き詰まる・・・。

「目撃者を探せ!!」 

うわごとに部下を叱責する、鬼の三船!

その三船の執念が、若松に関係をもつ女性を明らかにする。

お国のため、の美名のもと、

不具(フグ)と知りつつ陸軍中尉を夫とし、この実り無き結婚に、

その青春と女の半生を失った女性・望月靖子が浮かび上がるのであった。

静かに薄幸な宿命に耐え忍び、人生の秋を迎えるこの女性に、

いかなる真相が隠されているのであろうか・・・? 

次回、「二十七年目の女」に御期待ください。

 

 

(備考)

・マリを演じる小野恵子は、後年ドラマで活躍する女優と同姓同名の別人だと推察されるが、wikiなどでは混同されている節がある。

→(追加)

wikiの「志麻いづみ」の項に

>1974年、小野恵子の芸名で女優デビュー。以後、芸名を白川 望美、白川 恵美

>と改名。なお、デビュー時の芸名「小野恵子」は既に同姓同名の女優が存在

>しており、程なく改名したと思われる。その為「小野恵子」名義での出演作は

>不明である。

とある。

→(追加、R2,1.27)

#741 海女と真珠の詩 での望順子が志麻いづみであることから、当作を再視聴。すると、望月幼稚園の先生・恒子が、後年の志麻いづみであることが認識できた。

しかし、エンディング表記では、マリ=小野恵子、恒子=福井淑惠、とあり、志麻いづみに福井淑惠の芸名歴がないことから、誤記の可能性が高い。

よって

(誤)×・・・マリ=小野恵子、恒子=福井淑惠

(正)○・・・マリ=福井淑惠、恒子=小野恵子

となるのだが、、マリを演じた女優の正式芸名は不明なこともあり、ここでの指摘のみにとどめ、以下本文の改定はせず、両芸名の後ろに?をつけることで対応する。

(対応)・・・マリ=小野恵子?、恒子=福井淑惠?

ということは、wikiの「1974年、小野恵子の芸名で女優デビュー。」というのも誤りで、遡ること2年前デビューしていたことになり、小野恵子名義の出演作が発掘された現在では、wikiの改定が望まれるところである。

 

 

(視聴録)

 

氷川神社の階段で、東都文芸協会会員の名刺をもつ若松喜一郎(佐伯徹)の死体が発見された。死亡推定時刻は深夜の午前0時、死因は転落による脳底骨折であり、前頭部を殴打された跡もあり、凶器と思われる石、油絵の具のチューブを遺留品として押収した。が、過労からか現場検証中に三船主任は倒れ病院へ搬送、医師(五藤雅博)、看護婦(牧紀子)がつきっきりの面会謝絶状態となった。田中係長も病院に駆けつけ、事件の指揮を関根部長刑事に執るよう命じる。

 

若松を調べると東都文芸協会会員というのは出鱈目で、元々は売れない俳優らしかった。しかし、その肩書に騙され、バー・ゴンドラのホステス・山下朱実(小林裕子)は妊娠を余儀なくされ、ママ・やざわ由美(阿部寿美子)も若松のマンションに出入りする仲であった。ただ、朱実には別の男・細谷(中庸介)がいるようで、由美も雀荘の親父(鮎川浩)に管(クダ)を巻き、表面上は平静を装っていた。

 

また、油絵の具の線で、文房具店・豊文堂の老主人(秋月喜久枝)、孫・孝子(松倉弘子)の証言から、望月幼稚園園長・望月靖子(久慈あさみ)の息子・悟(石坂ひろし)がチューブを購入したことを突き止める。靖子は、戦時中従軍看護婦として傷痍軍人(佐竹一男)と結婚、誉れ高い女性と新聞に飾られたこともあったが、幼稚園経営については先生・恒子(福井淑恵?)、用務員・松子(水島京子)の話では良くないようだった。悟はすでに家出をしており、さらに一緒の相手は15歳の少女・マリ(小野恵子?)で由美の娘だという因縁があった・・・。

 

 

当作は、大まかにいうと、若松喜一郎を基点に様々な女性を配置、彼の死をきっかけに女性の過去、人生観が浮き彫りにされるストーリーです。ですので、事件の真相追及というよりは、事件の裏側にある女性像、さらにその子供たちの生きざまに焦点を当てていますから、刑事ドラマというより人間ドラマの要素が強い。

このねらいは、古くから特捜隊脚本を担当してきた村田武雄が、新生特捜隊となっていろいろと試行錯誤した一篇に思えます。#500以降の作品が少なく、さらにリメイク作も目立つので、当作が書きおろしかどうか判断が難しいのですが、いずれにせよ成功とは言い難い。

 

というのが、全体の流れの中で、三船主任入院余話はどう考えても不要なように思えます。看護婦の生き方を、戦前派、戦後派を比較させたかったのかもしれませんが、その違いは明瞭にされておらず、さらに両者の接点も見当たりません。

さらに、女性同士すべてに因縁がなくてはならないとはいいませんが、何かしら伏線はあったほうがいいとは思うのです。それが、場面場面で繋いでいるものですから、どうしても突拍子の無い場面として映るのです。

特に、若松と真犯人とが知り合うきっかけが曖昧模糊としています。それが、ラストの病室での場面と相まって「この作品は何だったの?」と疑問を抱くばかりで、個人的にはモヤモヤした形で視聴したというところでした。

 

お寺での場面(開始34分から10分弱)は良い感じで仕上がっているのに、その前までの流れがギクシャクしていたので、クライマックスに至らなかったことは残念です。出演者は、けっこう特捜隊ならではの男優・女優が出ているのに、何とかできなかったのかという思いは、再見した現在も思った次第です。

 

(2018年1月12日 全面追加)