特別機動捜査隊に関連する作品、映画・Vシネ・テレビドラマ・動画に限定せず、あるいは脚本・監督にこだわらず、主観的に関連性がありそうと判断したものを取りあげました。

 

 

【隼の魔王】 片岡千恵蔵の多羅尾伴内シリーズ7作目 白黒作品 約80分

 

 

(公開日・本放送日)

1953年公開・東映東京作品

2018年4月4日・東映ch放送、未DVD化作品

(原作・脚本)比佐芳武

(監督)松田定次

(出演者)

片岡千恵蔵、波島進、喜多川千鶴、田代百合子、日高澄子、薄田研二、三島雅夫、

佐々木孝丸、加東大介、久保幸江、清水将夫、島田照夫、上代悠司、加藤嘉、

安部徹、立松晃、杉義一、月形哲之介、福岡正剛、萩原満、岩城力、浅野進治郎、

山本麟一、関山耕司、佐原廣二岩上瑛、児玉晃、滝謙太郎、豊野彌八郎、

沖悦二、江島譲、山之辺閔、森和子、三笠博子、小松春枝

 

 

(特捜隊関連事項)

特捜隊で立石主任を演じた波島進が新田英彦役で出演。また、特捜隊で荒牧刑事を演じた岩上瑛が田宮刑事役で、#001 最後の犯人を追え で妹尾部長刑事を演じる佐原広二(この当時は佐原廣二)が山田刑事役で、それぞれ出演。

さらに、後年映画版の「特別機動捜査隊」(1963年、脚本・大和久守正、監督・太田浩児)、「特別機動捜査隊 東京駅に張り込め」(1963年、脚本・佐治乾、永田俊男、監督・太田浩児)で、立石主任を演じることになる安部徹がフィリーズ・山村役で出演。

 

 

(備考)

・当作はシリーズ7作目であるが、監督・松田定次、脚本・比佐芳武、撮影・川崎新太郎のゴールデントリオによるものとしては、記念すべき第1作目である。

・Movie Walkerには、樫村アナウンサー=天野脩次郎、とあるが、オープニング表記には該当名無し。さらに、Movie Walkerには、戸川計一=島田照夫とあるが、同様にオープニング表記に該当名が無いので、下記本文では未詳とする。そして、安部徹の配役名も劇中では山村、Movie Walkerでは青池と有るが、同様に前者に従う。

・実況アナウンサー発言と翌朝スポーツ紙との、勝敗スコアが異なるが、前者に従い(私的あらすじ)を作成。

・岩城力は、のちの岩城力也である。

・なお、主人公の七つの顔のうち、多羅尾伴内、藤村大造はいつも確定している。

 

 

(私的あらすじ)  

※配役名は、Movie Walker を参考に作成

 

東京レッドソックスと大阪フィリーズとが2勝2敗で迎えた国民野球選手権シリーズの5回戦目、4対2でフィリーズリードで迎えた9回裏、レッドソックス攻撃中、2死ランナー1塁、2塁で、打者は本塁打王でもある3番・高塚(未詳)、フルカウントで大詰め、投手・三好(未詳)の勝負球をスタンドに打ち込み、レッドソックスのサヨナラ勝ちとなった。ところが、高塚は1塁前で倒れ、急遽チーム総出でベンチへと担ぎ込む。知人だという医師が駆けつけ容態を見るが、もはや息絶えており背中の傷から、殺人事件として警視庁に連絡するよう促す。

 

検視は法医学教室博士・高森(立松晃)のもと行なわれ、報道陣は教室から出てきた大沢警部(佐々木孝丸)を取り囲むが、捜査本部にて話すと言って立ち去る。教室前は人影が無くなったと思いきや、多羅尾伴内(片岡千恵蔵)が待機していた。昨日ベンチに駆けつけた医師は、伴内の変装であった。しかし、伴内は研究室の控室に入ると、待ち構えていた受付嬢なる女に追い払われる。彼女の正体は、高森の姪・真砂子(喜多川千鶴)であり、勤める暁秘密探偵社の社長・久保木(三島雅夫)からの命で高森に聞きこみに来たのであるが、高森はその申し出を断る。それをドアの外で立ち聞きしていた伴内は、真砂子の帰途、ラジオ放送(高塚の死因は針状のものによるブシ・トリカブトでの毒殺だという検視発表)をともに聞く。そして、高塚のスキャンダルの相手がダンサー・エミー石川(日高澄子)であるが、問題はエミーと関係のある同チームの選手のほうだと仄めかす。

 

社に戻った真砂子は、久保木のほか、社員の伊達(山本麟一)、宮田(関山耕司)、根本(岩城力)の前で、伴内からの情報を報告。久保木は伴内が事件に乗り出したことに興味を覚え、出し抜かれないよう、もうひとりの選手を割り出すよう指示する。

 

一方、片目の運転手に変装した伴内は、レッドソックス・新田英彦(波島進)を青山2丁目まで送る。新田は婚約者・川瀬ゆう子(田代百合子)、父・川瀬(清水将夫)に会うためであった。新田が降りるとき、伴内は、これからキャバレー・クラウンに行くがエミーへの伝言は無いか、エミーのことで高塚と口論しただろう、と挑発する。

 

クラウンではエミーが躍る中、客席の新聞・ベースボールスター社・社長・石黒(薄田研二)、昭和林業社長・木俣(上代悠司)、その部下・望月(浅野進治郎)のところへ、フィリーズ・山村(安部徹)が訪ねてくる。石黒の仲介で、エミーがファンである石黒に会いたい要望を叶えるためであったが、クラウン内は久保木ほか暁探偵社の面々がエミーを監視している。真砂子は着替えに戻るエミーを直撃、証言を得ようとするが、すげなく断られ帰ることになるが、出入口で博打師・横川権吉に変装した伴内には気づかない様子だった。伴内こと横川は、客席でエミーの情夫・瀬尾五郎(加東大介)に絡まれている山村を救出、明日6回戦での奮闘を祈る。

 

翌日は山村の大活躍でフィリーズが勝利、またしても3勝3敗とイーブンになり、勝敗は7回戦目にもつれ込む。そして球場からの帰途、山村は木俣、望月の車で送られる。

一方、伴内は警視庁前で真砂子と遭遇。真砂子も警視庁詰めになったことを聞くと、またもや謎を投げかける。スポーツ紙である、ベースボールスター紙とスポーツ特報紙を見せ、高塚の死の直前の打席写真に、重要なカギがあると言い残し、警視庁に入っていく・・・。

 

 

(視聴録)

 

以上は、開始23分過ぎまでをまとめたものです。

このあと、伴内は大沢を通じ鑑識・津田(滝謙太郎)に打席写真を鑑定、推理の裏付けを得る。伴内同行のもと、大沢、山田刑事(佐原廣二)は、ベースボールスター社、石黒、カメラマン・中原(杉義一)と面会。中原はスポーツ特報社のカメラマン・戸川(未詳)に〇〇〇〇を譲ったと告白。そして、スポーツ特報社に、伴内、大沢、山田が出向くと、社員・三宅(月形哲之介)から、戸川は友人からの急用で上野に出かけたという。

 

伴内は、逃走の恐れと、生命の危険も考え、戸川の手配を要請するが、時すでに遅く戸川は列車内で変死を遂げる。戸川の遺体は、高崎の倉賀野町警察署に運ばれ、伴内、大沢、山田、同僚の三宅も到着。本人確認とともに、伴内は、何者かに軍資金を渡され東京退去の指示を受けた戸川が、渡されたウイスキーを飲んだところ青酸カリ入りだったと推理する。そこに、所轄刑事・田宮(岩上瑛)が東京からの連絡を告げる。山村が、昨晩10時過ぎにキャバレー・クラウンを出たまま行方不明のため、フィリーズから捜索願が出たという。

 

伴内、大沢、山田は東京にパトカーで戻ることになるが、その最中、山村が本日午前10時10分ごろ、大和ホテル2階31号室で死体で発見されたという無線連絡を受け、現場に直行する。現場に到着すると、すでに宇田川主任警部(加藤嘉)率いる捜査班が待っていた。高塚と同じ毒殺方法であり、さらに発見された31号室は密室だったことに頭を抱える捜査陣であったが、伴内は稀有なる推理を披露、事件解決の第一歩を踏み出す(以上、約33分ごろまで)。

 

 

今回は、主要登場人物が33分過ぎまで揃わないのも有り、さらに追記しています。それでも以降の約47分はドキドキワクワクの面白い展開、真相に繋がっており、前に紹介した多羅尾伴内 十三の魔王 よりも上手く仕上がっています。

ただ、白黒映画なのですが、もしカラー映画だったらどうだったか。東映初のカラー映画は「鳳城の花嫁」(1957年)なのですが、日本で初めての国産カラー映画が、「カルメン故郷に帰る」(1951年)であります。そして、各社がカラー映画で連携する風潮があれば、当作(1953年)がカラー映画の可能性もあったわけです。ならば、打席写真のカラクリを、伴内がより鮮やかに暴くのが強調できたでしょう、また、真砂子、エミー、ゆう子の女ごころの表情の変化をも、附帯的でありながらも表現することができたでしょう。これは無いものねだりにはなりますが。

 

それらはともかく、上手く仕上がっている点は、

・多羅尾伴内シリーズの定番となる伴内の変装(医師、片目の運転手、横川権吉ほか2人)が、実にタイミングよく映像に出てくる点。

・犯罪のトリック、動機も、伏線があり、あとで考えると納得しうる点。

・特捜隊ファンでいうなら、波島進の出演場面が多く、ストーリーの核にもなっているので、見ごたえがある点。

・この後、第4の殺人事件が起きるに及び、いったい犯人は誰なんだと、観客(視聴者)に思わせる時間経過の配分。この時点で開始約45分、残り35分あるので、あと1ヤマ2ヤマあるだろうと、期待を持たせる点。

・先ほど触れた、女ごころの変化を表す描写が絶妙な点(特に真砂子がある人物に対して)。

などが挙げられます。

 

片岡千恵蔵の多羅尾伴内シリーズは全数観賞してはいないですが、当作は面白さで上位に来ることは間違いなく、少なくとも小林旭の多羅尾伴内シリーズ全2作よりは確実に面白いといえると考えます。ゆえに、未DVD化作品というのは残念であります。大映京都製作の、#01  七つの顔、#02  十三の眼、#03  二十一の指紋、はDVD化されており、それらより音声、映像とも勝っているのにと、(採算もあるのでしょうが)つい思ってしまいます。

 

欠点をあえていうなら、神宮外苑と日比谷公園の場面が同じように見えることで、第4の殺人事件になぜ「ある人物」がいるのだろうと思ってしまうこと、ラストの肝心なところでの真砂子の音声が聞き取りにくいため、女ごころの吐露がわかりにくいことが挙げられます。

しかし、それでも、ラストまで持っていく勢いと見ごたえは、さすが東映のゴールデントリオの作品だというべきで、上記の些細な欠点など吹き飛ばしてしまうほどです。ですので、片岡千恵蔵の多羅尾伴内シリーズを、自身が観賞した中では傑作の評価を与えても良いと考えます。