特別機動捜査隊に関連する作品、映画・Vシネ・テレビドラマ・動画に限定せず、あるいは脚本・監督にこだわらず、主観的に関連性がありそうと判断したものを取りあげました。

 

 

【特捜最前線・#193  老刑事 鈴を追う!】

 

 

(公開日・本放送日)

1981年1月14日本放送

2008年10月DVD-BOX発売

(脚本)横山保朗

(監督)天野利彦

 

(出演者)オープニング

神代警視正(二谷英明)、船村刑事(大滝秀治)、橘刑事(本郷功次郎)、

紅林刑事(横光克彦)、叶刑事(夏夕介)、吉野刑事(誠直也)、

高杉婦警(関谷ますみ)、桜井刑事(藤岡弘)

 

(出演者)エンディング

鳥居恵子、吉田美由紀、新井裕人、町田政則、徳田雅之、五十嵐公二、新井真一、

鎌田功、松下昌司、小山昌幸、池永惣一、北川レミ、永野佐武郎、田中直子、

宮脇志郎、菊地優子、増田順司、工藤明子

 

 

(特捜隊関連事項)

特捜隊常連脚本の横山保朗が、初めて特捜最前線の脚本を担当。なお、監督も特捜隊常連の天野利彦。

 

 

(備考)

・「春原」は、「すのはら」とは読むが、紅林刑事のように「しのはら」とは読まない。その判断が困難なこともあり、下記本文では漢字表記だけにとどめる。

・当時は「定期券入れ」と一般的に言われていたが、下記本文では劇中表現に従い「パス入れ」と表記する。

・特命捜査課作成のビラの電話番号は、実際の警視庁・広報部のものです。

 

 

(予告篇から・あらすじ)

 

・・・・(坂道を下る着物姿の女性と、それを襲う過激派風の男2人の場面)

船村刑事の声 「強盗殺人事件の起きた坂は、鈴の鳴る坂でした・・・。」

・・・・(坂道で待ち合わせ、鈴のついたパス入れをかざす少年少女の場面)

船村刑事の声 「その鈴の音(ネ)は、少年と少女の絆。少年は不治の病に侵され、

        少女は彼の鈴を持って登校していました、

        まるで少年の分身のように・・・。」

       「今、少年の鈴が殺人事件に絡んで紛失した、

        私の目の前で・・・。」

少女の声   「スーくん死んじゃう、

        鈴が無くなったらスーくん死んじゃう・・・(涙声)」

・・・・(病室での少年と船村刑事の場面)

船村刑事の声 「私は、11歳と3カ月の少年を死なすことは、断じてできない!」

・・・・(以下、ナレーション)

特捜最前線、「老刑事 鈴を追う!」、御期待ください。

 

 

(視聴録)

 

特命捜査課、課長・神代のもとに投書が届く。1月5日、富士見坂での女子大生・しばたみどり(未詳)強盗殺害事件で、私立希望学園小学校教師・伊庭佐知子(鳥居恵子)が犯人を知りながらも隠しているという内容だった。字体から子供とも思われ、船村、紅林を小学校に向かわせることになる。船村は、この地名に、かつて世話になった元警視正・みずき(増田順司)が息子夫婦を事故で亡くしながらも、孫・すずお(新井裕人?)と暮らしている場所だと思い出す。

 

しかし、小学校に着くと、佐知子は1月7日付で退職しており、女生徒・ようこ(吉田美由紀)からは、すずおは去年の10月から入院していることを聞かされる。佐知子のアパートを聞き出し訪ねてみると、佐知子は強盗殺害事件のことは知らないの一点張り。紅林はその態度に疑問を抱くが、船村は佐知子の身辺捜査を吉野たちに任せることにして、現場に向かうことにする。

 

現場では、みどりが坂上の自宅マンションを出て下る途中で、過激派風の男2人(未詳)から鉄パイプで連打されているところを、坂下の主婦・春原よしこ(工藤明子)が目撃、110番通報したという。よしこはようこの母でもあるが、事件当日、現場の坂上で犯人たちが逃げた方角に、病院の許可を得て自宅に戻ったすずおの自宅(みずき邸)があった。よしこは、すずおを見舞ったようこのことも心配になり駆けつけると、ようこ、すずおはベランダにいて事なきを得たが、ふと足元を見ると1万円札がはみ出したハンドバッグが落ちていた。紅林は、犯人はみどりからハンドバッグを奪ったものの、何も取らずに逃走したものと推察する。

 

また、佐知子のアパートはすずおの自宅から15分くらいだが、よくすずおを迎えに来て登校していたという。すずおは早くに母を亡くしたこともあり、佐知子に甘えていたが、ようこはそれにやきもちを焼いていたようでもあった。船村は、投書はようこが書いたのでは? そして、佐知子はここで犯人に会ったようすを、ベランダの2人に見られたのでは? と考えを推し広げていく。

 

東中央病院を訪れた船村、紅林は、みずきと久々の再会を果たし、病室のすずお、ようことも顔を合わせる。授業ノートを渡しに来たようこの筆跡を見て、船村は投書主に確信を持つが、どう切り出したらよいか、ようこと一緒に電車で帰路につく。ようこは、すずおと互いにパス入れにチェーンで鈴をつけていたが、すずおの鈴を借りて自分のパス入れにつけ、電車で通うことを約束しあっていたこともあった。

 

電車に乗るようこ、船村、紅林。ようこのパス入れからずずおの鈴が外れるが、船村は拾い、チェーンとの楔が緩んでいたせいもあり、補修してようこに返す。

と、次の駅で雑誌を抱えた佐知子が隣の車両に乗り込んできた。佐知子は席に着くと、何やら封筒を雑誌に挟んでいた。それを見つめるジャンバーの男(未詳)。紅林は隣の車両に移りマークする。ほどなく、ようこも気づき、佐知子の側に寄り話しかけ、船村はそれを見つめる。さらには、紙袋を持つ男(未詳)が、佐知子の斜め前の席に座り窓を開けてくつろぐ。

 

そして、2つ目の駅で佐知子は雑誌を網棚に乗せ下車、それを紅林が尾行する。網棚の雑誌を素早く取ろうとしたジャンバー男の腕を、船村が掴みホームまで飛び出て格闘。しかし、その最中ようこに接触、勢い余ったようこは立ち上がった紙袋男にぶつかってしまう。なんとか、ジャンバー男を確保した船村だったが、席にうずくまり電車から降りてこないようこに不安を覚え、名前を呼び続けるものの、電車の発車する音とともに虚しくホームに響くだけだった・・・。

 

 

上記は、開始21分ほどまでをまとめたものですが、事件自体よりもその裏側にある人間的な事象にスポットライトをあて、事件解決と並行処理をしていくところが、特捜隊とは違うところでしょう。特捜隊だったら、たぶん三船班担当がふさわしいと思いますが、あくまで事件の方に重きを置いて、三船主任とようこの心温まる話にすると思います。そして、事件の題材が過激派、強盗であることから、特捜隊ならすずおの挿話を少なめにするか、「すずおをかいがいしく看病するようこ」のみにサブストーリーを展開させることでしょう。あくまで推測ですが・・・。

 

どちらが良いかはなんともいえませんが、当作では天野利彦監督の演出が冴えています。特捜隊でたまにみられた、文章的な演出は影を潜め、映像で今何が起こっているか、なぜこの場面の背景にある者・物が必要なのか、映像表現に際立つものが見受けられます。たとえば、上記本文では、みずき邸、現場、春村家の位置を書き出していますが、観賞すると映像の背景で表現しており、さらにはようこのすずおへの思いも映像で表現するなど、非常に上手い作りになっています。

肝心の事件の真相にいたるのも、船村がようこの願いをかなえるため動いている最中であり、2つの出来事を1つに繋げるところも見応えがあるところです。ただ、ラスト5分での真相で、ある人物が電車での一部始終を目撃したのに、なぜライブハウスに仲間が現れたのかというところは、特捜隊のように辻褄が合わないところが見受けられるところではあります(笑)

 

また、特捜隊での横山保朗脚本としては

#586 ある 死刑囚の詩・・・・・監督・松島稔(三船班)

#628 猫 ・・・・・・・・・・・監督・松島稔(三船班)

を想起するところもあります。

当作に置き換えると、前者はラスト3分ようこの思いをかなえる小粋な場面、後者は(時刻は無いものの)事件推移の映像表現という場面です。

これら、自らの旧作から換骨奪胎しながらも、特捜隊とは違う人間的な刑事ドラマを脚色した横山保朗、そして、それを採用したのは特捜隊で演出を鍛えられた、円熟期の天野利彦というのが自分の見立てであります。

 

ちなみに、特捜隊→最前線は、毎週水曜日午後10時からの1時間ドラマというのが定番化していました。残業が当たり前のサラリーマンが帰宅、風呂、食事してからのくつろぎ、あるいは自営の夫婦が店を閉めて一段落というのが、午後10時前でありました。日本全国どうかはわかりませんが、少なくとも自分の周辺ではそうでした。

それを吹き飛ばしたのは、テレビ朝日が午後10時から久米宏司会の「ニュースステーション」なる番組を、毎週(月)~(金)に立ち上げたことです。新しい層の視聴者は得たでしょうが、これにより別の曜日、時間帯に追いやられた番組は終焉の一途をたどりました。最前線もそのひとつです。せめて、年1回の特番で繋げなかったかと、視聴者の立場とはいえ、痛恨の極みであります。

今でも、「ニュースステーション」の後釜でもある、「報道ステーション」なる偏向報道番組が幅を利かせておりますが、(過去の番組でもやりまくっていた)前司会者の八百長ぶりに、地上波を見なくなったのはこの頃くらいでしょうか・・・。

夜遅く放送され、それも一線を退き気味の俳優たちが演じる刑事ドラマを、今でも見たいと思っています。