※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#600  海は帰らない】

 

(本放送)1973年5月2日

(再放送)2016年8月25日

(脚本)駒田博之

(監督)吉川一義

(協力)無し

(協賛)伊東観光協会、ホテルゑびな

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、

鑑識課員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、

鷲見刑事(柴田昌宏)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

葉山良二、生田くみ子、遊佐ナオ子、宍倉るみ、進藤幸、加藤土代子、今村原兵、

里木左甫良、日高ゆりえ、中田博久

 

 

(あらすじ・予告篇から)

 ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

35トンの漁船、この小型船舶のハードなノルマ、

漁労長・川崎俊平(註・備考参照)の過失から、

濃霧中に起こった衝突事故・・・。

海は乗組み漁民の命を奪う。

一家の屋台骨を失った遺族の生活苦。

たったひとり生き残り、

良心の呵責にさいなまれる川崎にとって、

岡の風もまた無情であった・・・。

そしてある日、港の寄生虫、

南米海運の嘱託・山口わたる(註・備考参照)が

殺されるという事件が発生する。

果たして、三船班の前に、

いかなる真相が展開されるのであろうか!?

次回、特捜隊、「海は帰らない」に御期待ください。

 

 

(備考)

・後に日高主任を演じる葉山良二が、川崎俊平役でゲスト出演。

・予告篇では「漁労長・川崎俊平」「山口わたる」と発声されるが、本篇劇中では、漁民会話で「船長・川崎俊平」と発声、報道で「山口勉(ヤマグチツトム)」と表記・発声されているので、以下本文では劇中表現をとる。

 

 

(視聴録)

 

雷雨の夜、バーのマダム(宍倉るみ)が閉店しようと、まり(宗田千恵子)、伸江(佐藤明美)、みほ(生田くみ子)に声をかけると、ずぶ濡れの男が入ってきた。男は川崎俊平(葉山良二)といい、みほと名乗り働いている宮本洋子に、子供・いちろうの入院費の足しにと現金を持参したのだが拒絶される。翌日、川崎が置いていった現金を、マダムが洋子に手渡しに来るが、郷里の母(日高ゆりえ)から連絡が入る。いちろうの容態が急変したのである。

 

同じころ、路上で刺され出血多量の死亡死体が発見された。男は山口勉(中田博久)、死亡推定時刻は昨夜雷雨の10時前後、遺留品として凶器の短刀、木村某と南米海運との契約書があった。関根部長刑事、畑野刑事は木村の母(進藤幸)から、松木部長刑事、鷲見刑事は南米海運で所長(佐野哲也)から事情聴取。さらに契約者リストの板垣二郎(田村元治)からの話から、山口は手配師で、南米海運からの支度金を法外な割合でピンハネしていたことがうかがえた。

 

もうひとりのリストの男・川崎俊平については、下宿先の大家(加藤土代子)、民謡酒場ニッポンの従業員・カオル(遊佐ナオ子)にあたるも進捗は無かったが、三船主任、石原刑事がふとしたことから廃品回収の男(池田生二)と巡り会ったことで、事態は進展する・・・。

 

 

ストーリーはその後、伊豆で漁業組合の組合長(三川雄三)、漁師(里木左甫良、仙波和之)、和尚(今村原兵)から川崎の過去が明らかになり、さらには学生風の男たち(野本博、菊地正孝、ほか)の登場で世相を表現したり、展開が動きます。

ここで川崎が恨まれる理由には、いくら1973年、44年前の作品といっても?がつきます。吉川一義監督ならではの深読みをすれば、船長の最後退船は、かつての義務規定から努力規定に変更されたのが、このくらいの時期なので、もしかしてこれを題材としたのかもしれません。そして遺族のこぼれ話、漁業組合の後日談で、視聴者に川崎への感情移入を大きくさせる効果を狙ったとも考えられます。

 

しかし、このようにすることで港湾関係者のことを、バカにはしてないか、そこまで非常識なのか、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのか、とも感じます。法律よりも感情が優先するというのは、近隣諸国ではあるまいにとは思いながらも、ラストでそれらを払拭できたのかどうとでも解釈できるのも、首をかしげるところです。視聴してきた限りの吉川一義監督の作風だったら、棺桶の前の遺族の出来事を強調するために、両者とも顔を合わせることなく、星飛雄馬を樹の陰で見ている明子姉さんの場面みたいにするのかなと予想していたのですが。

 

それらはともかく、刑事ドラマというより人間ドラマに重きを置いていること、それも謎らしい謎も無いので、いつもの特捜隊を期待していると「あれっ」と思うことでしょう。極端に言えば、検証本のあらすじそのままでもあります。

しかし、ここまで真犯人に憐憫の情をもって、描いた特捜隊作品は数少ないものです。近作が、真犯人に厳しい態度で臨む三船班なだけに(「#597 愛の屈折 銀座」では視聴者は憐憫の情を持ちますが、三船班としては厳格でした)、箸休めの趣向もあったかもしれません。

ラストで三船主任が見せる、哀しみの顔もポイントです。

 

(2018年1月13日 全面追加)