※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#597  愛の屈折 銀座】

 

(本放送)1973年4月11日

(再放送)2016年8月11日

(脚本)元持栄美

(監督)松島稔

(協力)無し

(協賛)東京第一ホテルチェーン・銀座第一ホテル

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、鷲見刑事(柴田昌宏)、鑑識員(西郷昭二)、

田中係長(山田禅二)、石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、

畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

富山真沙子、倉田爽平、葵三津子、片山滉、浜久子、田村孝司、大久保あかね、

大野千秋、森山周一郎、並木一路、柳川慶子、永井柳太郎、見明凡太郎、入川保則

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

社長令嬢を妻にするエリート課長が、謎の死を遂げた。

現場(ゲンジョウ)に残された

唯一の遺留品の意味するものは何か!?

1人のホステスを巡る父と夫が、

そしてまた、

義理の姉と夫との乱れ切った関係を突きとめたとき、

妻は何を信じたらいいのであろうか!?

ギラギラした男の欲望と哀しい女の性(サガ)が、

狂ったプリズムを描くとき、

そこには鬼火にも似た怨念と憎悪の炎が燃えるのであった!

次回、「愛の屈折 銀座」に御期待ください。

 

 

(備考)

・エンディング表記に、劇団東芸、東映演技研修所がクレジットされている。

・樫村の会社名を、関根部長刑事は樫村コンツェルン、鷲見刑事はかしま商事と発言しており、判断しづらいので、下記本文では単に会社としました。

・東映chでは、当作の翌週に「#598  黄色い性の 風化」「#599  女房貸します」が連続して放映されると思いますが、「#598  黄色い性の 風化」の本篇終了後の次回予告篇(#599分の予告篇)は見ないことをお勧めします。

 

 

(視聴録)

 

銀座第一ホテルでは、廣瀬雅之(倉田爽平)、よの智子(大久保あかね)がお見合いをしていた。雅之を紹介したのは戸山貴代(富山真沙子)で、夫・秀夫(入川保則)の大学時代の同級生でもあり、雅之も秀夫も貴代の父・樫村(見明凡太郎)の経営する会社の社員でもあるからだった。智子を紹介した邦子(柳川慶子)は、貴代の兄の嫁、義姉にあたる。

 

その翌日、貴代は特捜隊・三船班から夫・秀夫の亡骸と対面させられ卒倒する。前日午後3時に札幌から電話をもらい、秀夫の声で今日帰ってくると言っていたからである。札幌からの葉書もあり、午後3時以降の北海道からの航空便に秀夫の名も無いことで、三船班では様々な意見が出ては割れていた。

貴代は報告のため父の会社を訪れるが、樫村は部下・江波(並木一路)に怒号を浴びせていた。秀夫が5千万円使い込みをしていたことが発覚したからであった。その後、貴代は雅之の情報でクラブへ向かい、これを関根部長刑事、松木部長刑事、畑野刑事、石原刑事が尾行、店内に入り張り込みを続ける。貴代、雅之は、クラブホステス・由美(葵三津子)が秀夫の浮気相手とみて見張っていたのだが、石原刑事には見覚えのある女だった。

 

そして、由美は銀座第一ホテルへ向かい、フロント(片山滉)に「ユキムラユウゾウ」の泊っている6578号室を案内してもらう。貴代、雅之は、ロビーで由美と逢瀬の終わった「ユキムラユウゾウ」なる男を見て、驚きの表情を見せる・・・。

 

 

登場人物は、さらに中小企業の社長・川井一郎(森山周一郎)、靴の修理工で雅之の父(永井柳太郎)も交えストーリーは展開していきます。事件ものとしては、札幌にいるはずの秀夫がなぜ東京で殺されていたのか、ゴシップものとしては、秀夫を巡る周辺人物の性的関係はどうか、捜査側としてもどこをポイントに真相追及していくか、がストーリーの核となります。

それで結果はどうだったかというと、序盤、終盤のとある人物の場面は不要、蛇足であり、真犯人がなぜ遺留品を残した説明が無いことを除けば面白く見れました。

 

そして、何気なく雇用者、労働者の関係を描き、世の中の不条理さを訴えているのもポイントは高いですね。これを、放送当時は「差別だ」とテレビ局に怒鳴りこんだ方々もいたようですが、これはストーリーの隠し味になっているので、そういった意図は制作側には無かったと思います。この場面を無くすと、シナチクの入っていないラーメンのようであり、むしろこの場面のおかげで、事件の根底となる発生要因を訴えていると当時の制作側に言ってほしかった。

秀夫を演じた入川保則のふてぶてしい台詞、所業は、自分が見てもカチンとくるほどなので、抗議が来るほどの演技をしたともとらえることもできます。

 

札幌―東京間のトリックというか謎解きも、明かされていく経緯が興味津々で、落差の大きい元持栄美脚本としては、良い出来だと思います。鑑識を表に出すのを控えるのも新趣向であり、リアルさよりノンフィクションゆえのストーリーを狙ったものとも考えられます。

また、畑野刑事の「#546 四匹の牝猫」を思い起こさせるコミカルな役も面白く、これが暗めのストーリーへの程よい箸休めになっているところも良いところ。それゆえ、前述した部分が是正されていればとの思いがあります。

 

貴代を演じた富山真沙子は、「#574 ある女の詩」は家族のためなら猪突猛進する妻を演じ、「#587 雑草のような女」では虚無感の男に惚れる夜の女を演じ、当作では周辺の人間にことごとく裏切られる妻を演じています。個性のある笑顔も当作では封印、口を小さめに開いて笑う仕草など、オールマイティに演じています。器用な女優さんとのイメージですが、だからこそ特捜隊のような番組には不可欠だったのかもしれません。

 

(2018年1月13日 全面追加)