※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#598  黄色い性の 風化】

 

(本放送)1973年4月18日

(再放送)2016年8月18日

(脚本)横山保朗

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、鑑識課員(田川恒夫)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、鷲見刑事(柴田昌宏)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

伊藤幸子、根岸一正、田中智子、佐藤明美、塚田正明、吉沢信子、平野正明、

渡部邦男、木島幸、小沢悦子、片岡五郎、村上幹夫、曽根秀介、本田圭子、

田浦正己

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

ひとりぼっちのバースディ、

灰色のオフィスの中に失ってしまった女の半生・・・。

若い肉体、情熱、そして希望は、どこへ消えてしまったのか?

ふとした偶然か? 若者への嫉妬か? ある衝撃が恵子を襲う!

そして、マンション密室内に倒錯の世界が展開する・・・!

それは、OL恵子のコレクトと飼育であった・・・!

前後して起こる、エレベーター内連続婦女殺人事件!

動き出す三船班は、そこに都会の砂漠を見るのであった・・・!

次回、特捜隊、「黄色い性の 風化」に御期待ください。

 

 

(備考)

・実見の前に、予告篇は見ないほうがいいかしれません。

・3人目の被害者を、警官(菊地正孝)は「まさこ」、石原刑事は「あきこ」と発声するのは、エンディング表記で「晶子」とあり、脚本の読み方の個人差と思われます。

・恵子のマンション前の家について、検証本は「五島」、劇中の表札は見にくいものの「五藤」と読めるので、後者を採りました。

・次回作「#599  女房貸します」で触れていますが、当作の本篇終了後の次回予告篇は見ないことをお勧めします。

 

 

(視聴録)

 

18歳で就職、18年勤続の模範社員と謳われ、マンションまで購入した恵子(伊藤幸子)も、寂しさの中ひとりで36歳のバースディを過ごしていた。そんな翌朝の午前5時過ぎ、マンション前の五藤家の若者(根岸一正)は陸上のトレーニングをしていたが、恵子は、その若者に睡眠薬を飲ませ拉致監禁を行なう。その際、エレベーター内で同じマンションの住人、バー勤務のなかがわ晶子(佐藤明美)の扼殺死体を発見するが、構わず若者を自宅に運び込む。恵子は、若者の手足をロープで縛り、猿轡をかませ、自由を奪ってしまう。

 

その後、晶子の隣室の夫人(未詳)からの通報で、三船班が到着。死亡推定時刻は午前5時前後、暴行(強姦の意)の形跡は無く、何も盗まれていないことが判明した。三船主任は、エレベーター内に残された泥を鑑識に回すとともに、1月の女子大生殺人事件、2月の人妻殺人事件とが、今回の事件と殺害場所、殺害方法が酷似しているのを気にかけていた。さらに、駐車場脇に落ちていた片方の運動靴を発見、回収して鑑識に分析させることにする。

また、聞きこみで、関根部長刑事、松木部長刑事はマンション前の五藤家を訪れ、若者の兄夫婦(田浦正己、田中智子?)から毎朝トレーニングをしている弟のことを聞くが、まだ自宅に戻ってきていないとのことであった。

 

駐車場の様子を見ていた恵子は気になりながらも、買い出しのため車を動かさざるを得なくなるが、三船主任は見逃がさず、畑野刑事、鷲見刑事に尾行させる。

また、所轄署刑事(村上幹夫)から、3つの事件に共通したタムラ家具センターの存在が判明。そして、店員(平野正明)は、3軒とも運転手・谷口(塚田正明)、大学生バイト・ささき(片岡五郎?)の担当だと証言。三船主任は班主力を、本日の配送先である今泉みどり(本田圭子)のマンションに急行させる・・・。

 

 

当作は、展開がやや強引すぎなところと、ラスト7分くらいで飛び道具的な証拠を出してくるなど「あれ?」というところはありますが、劇的な場面転換に至る点と、細めながらも伏線を張っていたところを考えると、許容の範囲でしょう。

さらに、拉致監禁の恐怖から派生して、2つの恐怖を作り出していく展開は「あっ」と叫ばずにはいられないほど、脚本・横山保朗、監督・天野利彦のコンビネーションは優れていました。特に、近作の天野利彦作品からは、考えられないほどのレベルアップ。恵子の視線が、知らず知らずのうちに、三船班視線、視聴者視線へと移り変わるテクニックも、新生特捜隊になった#500以降当初のスタイルに戻ったようです。

 

ただ、ラスト15分がせめて20分であったら、恵子と若者の心の交流らしきものも描写ができて、エレベーター内の部分をもうすこし膨らませることができたかもしれません。そしてラストの「鹿威し(シシオトシ)」「添水(ソウズ)」の場面も、もう少し印象に残るよう描けたような気がします。自分は、あれらの用途から、邪念のこもった主を追い出したと解釈したのですが、時間があれば、説明を付け足したかもしれません。ちなみに、この場面を、吉川一義監督だったら病室に、田中秀夫監督だったら朝の会社の朝礼にしていたかもしれません。三監督はそれぞれ個性的なので、今までの締めを見ていたイメージで思った次第です。

 

当作は謎解きものと解釈することもできますが、時間が経つにつれ、恐怖・ミステリーの色模様が変わってくるのが特徴です。その点でいえば、今回の三船班は添え物にすぎず、脚本、監督、そして拉致監禁の2人(伊藤幸子、根岸一正)に食われた作品ともいえるでしょう。個人的には、「#597 愛の屈折 銀座」に続き2作とも興味ある作品が見れて良かったと感じました。

 

(2018年1月13日 全面追加)